H邸リフォームの一年検査に行ってきました。
一年検査というのは、完成して一年経ったら行う検査です。建築家と工務店さんとで、工事後の不具合がないかなどを見ます。H邸の場合は「製作した建具の動きはスムースか」とか「壁と天井の左官仕上げにおかしなところはないか」といった点に特に注意をして検査をしました。〈骨董品の重い外部用建具〉を転用したリビングの引戸や、〈お気に入りのステンドグラス〉を埋め込んだ水周りの引戸など、特に工事が難しいところです。左官の壁は、仕上げ工事の丁寧さはもちろんですが、特に丁寧な下地工事が求められます。気を抜いたら仕上げにヒビが入ったりします。厳しい目で見て回りましたが、建具の動きはとても良く、左官仕上げには全くヒビは入っていませんでした。これも丁寧な工事の賜物です。
もう一つ、目を凝らして確認をしたところがあります。〈モザイクタイル張りキッチン〉と一体となった〈造り付けのダイニングテーブル〉です。欅の一枚板を加工してつくったテーブルです。一枚板はとても反りやすいので、デザインに取り入れるには細心の注意が必要です。まずは十分に乾燥した木を使うことが大切です。乾燥した木でも反ることはあるので、さらに注意が必要です。材木屋さんとカンカンガクガクやった結果、このダイニングテーブルの天板の裏に何カ所か反りどめを入れました。反りどめを入れると野暮ったい印象になりがちですが、さりげない印象になるようにデザインをしました。自然素材の大きな板には、ヒビや割れなどが入りやすいところもあります。そういったところには、材木屋さんの目利きで〈ちぎり〉を入れてもらっています。私達もいろいろと考えて頑張りましたが、材木屋さんも見事なものでした。適切に〈反りどめ〉と〈ちぎり〉を入れたテーブルは、全く反っていません。四季をとおして、湿気で膨らんだり乾燥で収縮したりしてきたテーブルは、まるで出来たばかりのように美しいままです。
リフォームした空間の雰囲気は、完成した頃に比べると、どことなく成熟した印象になってきました。お施主さんの素敵な暮らし方が、この空間をより良いものにしているからだろうと思います。
福島・遠山