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世田谷区K邸リフォーム-6(どのようなデザインにしたのか ①)

「どのような雰囲気の家にしたいですか?」と伺ったところ、「ヨーロッパ風のインテリアデザインが好み」「色がきれいな部屋にしたい」「硬い印象は避けたい」ということでした。印象的だったのはカーテンのお話です。質の良いカーテンにしたいと仰っていて、特にスイスのファブリックブランドであるフィスバさんのカーテンを希望されていました。デザインを検討しはじめると、ここに基調があると感じるようになります。
家具についてもイメージを持っていらっしゃいます。であれば、インテリアコーディネートを前提としてデザインすることが、好ましい雰囲気にする上では大切なはずです。そこで、私からインテリアコーディネートも提案させて頂きました。

夫婦の寝室のモールディング

ことさらヨーロッパ風にしたいとなれば、どこかにそれらしきモチーフが少しあると効果的に思えます。そこで、造り付け家具の扉にはモールディングを入れるようにしました。
やりすぎないように配慮が必要です。例えばリビング・ダイニングにモールディング入りの腰壁を設けると、よりヨーロッパ風が強調されるかもしれません。しかしながら、既存の空間には合わないと判断をしました。そもそも既存の空間の骨格が日本的であるためです。ヨーロッパの住宅と同じデザインをするのではなく、どこまでヨーロッパ風のテイストを入れるのかという感覚かもしれません。

アーチとアクセント壁

リビング・ダイニングと前室を仕切る壁の開口は、アーチ形にしました。これによって、さらにヨーロッパ風を楽しめるインテリアデザインになったと思います。どのようなアーチ形が良いかと考えたのですが、ここでも既存の空間の骨格が日本的であることが影響してきます。半円アーチ形にするとヨーロッパ風になるとは思うのですが、十分な開口をつくるには天井高さが足りません。そのため、低めの天井であっても大きめの開口をつくれる三心アーチ形としました。

福島

世田谷区K邸リフォーム-5(どのようにプランニングをするのか ②)

既存家屋からの大きな変更点は、一階の続き間を再現する事でした。竣工時には続き間であった部屋が、築10年頃のリフォームによって完全な二部屋に分けられていました。今回の築45年でのリフォームにあたり、この二部屋を広い一部屋として使いたいという要望もあり、続き間に戻す事になります。45年前の竣工時から見ると、続き間を仕切る襖(ふすま)を無くしてリビング・ダイニングとして使う感じです。襖の並びにある袖壁を構造的に残す必要があったため、続き間としての空間構成は保持される事となりました。

リビングの前室

結果として18帖(リビング10帖+ダイニング8帖)の一部屋になりますが、それでも例えばカウチソファを置くとなると、面積が足りているとは言い難い状況です。そこで隣室の空間をリビングに振り分ける事を考えました。隣室の収納とリビングの間の壁を取り払うことが出来れば、単純にリビングの面積を拡張できます。しかし、この壁には柱と筋交が入っている部分があり、そこは構造的に残す必要があります。そこで、筋交が無い部分だけを開口にして、隣室の収納をリビングの前室に用途替えする事としました。この際、収納の隣室側は壁にします。リビングの面積拡張ではなく、リビングをサポートする前室によって不足した面積を補う考え方です。具体的に、前室をリビングの出入り口と動線にしているので、その分だけ面積に余裕がうまれます。

寝室の前室とウォークインクローゼット

部屋の使い方の見直しで顕著なのは、部屋の一部を仕切って納戸やウォークインクローゼット等の収納にしたところです。収納については、具体的に所有している服や靴などの形と数を確認して計画を立てています。Kさんご家族は相当な荷物を整理されたのですが、それでも気持ち良く過ごすには収納量を増やす必要がありました。
単に収納量を増やすだけでは十分ではありません。便利な位置にあってこそ、収納を有効かつ快適に使うことが出来るものです。緻密な打ち合わせを重ねて、構造との兼ね合いを見ながら、既存の間取りは変えずに収納の壁や入口の位置を決めていきました。

福島

世田谷区K邸リフォーム-4(どのようにプランニングをするのか ①)

既存家屋の部屋は、ほとんど南向きのシンプルな配置で、数も大きさも充実していたと言えます。それゆえにKさんご家族は、間取りそのものに対する不満のようなものは、あまり感じていらっしゃらないようでした。
とは言え、より暮らしやすい家にしたいという話しにはなります。そこで、あまり間取りを変えずに部屋の使い方を見直す事にしました。

L型キッチン

高齢のお母様は、できるだけご自身で家事をしたいとお考えです。娘さんご夫婦は共働きであり、とてもお忙しくされています。こういった現状を鑑みると、より家事の負担を少なくしたいところです。
とは言え、長く習慣にしてきた家事の仕方を全く変えてしまうのは、特にお母様には負担になると考えられます。
お母様が長い時間を過ごしていたキッチンは、既存のレイアウトを踏襲した〈L型キッチン〉と〈ダイニングに向いた配膳カウンター〉としました。ただし、より使い勝手良くなるように各部の寸法や向きを変え、より収納量が多くなるように造作家具を増やすなどしています。

洗濯物干し場

洗濯の仕方については、娘さんご夫婦の習慣を基にしています。
家事負担の軽減については、生活家電に頼ることも提案しました。特に食器洗浄機と衣類乾燥機とロボット掃除機は、忙しい共働き夫婦の生活において大きな意味を持つと考えています。価値観や習慣に鑑みて、食器洗浄機とロボット掃除機を使う事になりました。

福島

世田谷区K邸リフォーム-3(どのような能力が作り手に求められるか)

リフォームと新築とでは、設計の進め方が異なります。そのため、建築家に求められる能力もまた異なるように思います。
リフォームでは、既存家屋がどのように作られたのかを把握する事が大切です。築年数が経っている場合は、古い建て方を理解している必要もあります。どのように作られたのかを知るためにも、そこにどのように手を加えることが出来るのかを判断するためにも、建築家には〈人の手で出来る作業に対する知識や感覚〉が求められます。そして、それをデザインとして昇華する能力もまた求められると思います。

ダイニングから見た配膳カウンター

工務店さんに求められる能力もまた同様です。とりわけ〈いつもとは違う臨機応変な対応〉が必要になりますが、これは住宅を施工する多くの工務店さんにとって難しいように思います。工事中には、殊に大工さんにかかる負担は大きく、いつもよりも〈知識〉〈経験〉〈感覚〉が求められます。出来る事なら、リフォームする既存家屋が建てられた頃に一線級であった大工さんに面倒を見てもらいたいところです。
K邸リフォームの場合は、馴染みの工務店さんにお世話になりました。大工さんはお二人で、共に45年前には活躍をしていた70歳ほどのベテランになります。どちらも期待にたがわぬ仕事ぶりでした。

福島

世田谷区K邸リフォーム-2(どのように設計に取り組んだのか)

高齢のお母様と娘さんご夫婦が共に暮らすのを機に、築45年のお母様の家を全面リフォームする事になりました。

ある意味で、とてもリフォームらしい設計になったと思います。
一般的に全面リフォームに求められるのは〈傷んだところを直す〉〈足りない性能を付加する〉〈全てのスペックを今よりも上げる〉〈変化したライフスタイルに合わせる〉〈好みのデザインにする〉といったところかと思います。

Kさんご家族には、既存家屋での暮らしのイメージがあります。リフォームに当たっての要望は、そのイメージのうちにある問題点を解決したいというものでした。はじめの頃の打合せでは、既存の家のこの部分をこうしたいという具体的なお話が多かったように思います。どちらかと言えば暮らし方を大きく変える事の無い、修繕に近いリフォームと言えます。建替えたかのような家にリフォームする場合と比べると、より既存の家を活かす方法です。
私には「高齢のお母様の暮らし方が大きく変わるのは避けたほうが良い」という思いもありました。そういった事情によって、あまり間取りを変えない設計方針となります。外観についても、修繕を施した上で色や形を整えるにとどめる事としました。

外観

打合せを重ねていくと、はじめは修繕に近かった要望に変化が出てきて、デザインとライフスタイルにもKさんご家族の想いが広がっていきます。素敵な家具やカーテンに囲まれて、雰囲気が良い洋風の空間でくつろいで過ごす、そういったイメージです。
間取りはあまり変えないデザインによって、ライフスタイルを大きく変える事となります。

福島

世田谷区K邸リフォーム-1(竣工写真)

世田谷区K邸リフォームの竣工写真が出来あがりました。
素敵な仕上がりになったと思います。飯貝カメラマンによる撮影です。

K邸リフォームは、インテリアデザインに重きを置いて計画したように思います。特にインテリアコーディネートを前提として、その雰囲気を創る意図がありました。

ダイニング

デザインするにあたっては〈光と色〉も意識しました。例えばリビング・ダイニングでは、 〈藍色〉のレースカーテン越しに広がる外光の色を、空間の基調としています。
夫婦の寝室では、木の素材感が印象的な空間に〈浅紫色〉のアクセント壁が沈んだ色の光を反射するようにしています。

夫婦の寝室

こういった色のある光を写真に反映する事は、とても難しいと思います。
〈目に見えている印象〉と〈写真の印象〉の間にズレが生じるのは、常について回る問題なのかもしれません。

そういった問題を乗り越えて、カメラマンは建築を写真にしていくように思います。

福島

葛飾区K邸-1(竣工)

葛飾区K邸が竣工しました。
狭小二世帯住宅です。敷地周辺には畑やお寺などの緑地が点在していて、のんびりとした雰囲気が少しだけ残っています。

周辺環境を活かそうとした点と、先々の介護や相続に配慮をした点が、この家のあり方を決めたのではないかと考えています。

正面

前面道路から敷地を見ると、切妻屋根の細長い平屋が二つ並んで建っています。控えめな印象の佇まいになったと思います。家づくりの打合せをはじめた頃に、お施主さんに慎ましやかな印象を受けました。敷地周辺を見まわして、主張が強めのデザインは似つかわしくないと感じもしました。そういった経緯もあり、この家には抑え気味のデザインが相応しいという考えに至ります。

それぞれの棟に、高齢のお母さんと娘さんの一人暮らし世帯が入ります。二棟の間に‘アプローチ’と‘二世帯共有玄関’と‘テラス’が挟まれるような配置です。

アプローチ

玄関

テラス

外部から内部に至るまで、バリアフリーとしています。玄関前に段差をつくらないために‘アプローチ’を全面的に‘スロープ’としたところは、この家の特徴の一つです。‘アプローチ’を登ると‘二世帯共有玄関’になります。家に入る前から、この玄関の‘ガラスの引き違い戸’越しに裏の緑地が見えます。隣接する緑地を風景として取り込んでいるところも、家の特徴の一つです。

キッチンやダイニングからは、窓越しにのんびりとした風景を眺められます。この窓は景色を絵のように切り取る‘ピクチャーウィンドウ’としてデザインしました。

ピクチャーウィンドウ

ダイニングの‘天井までとどく障子’を開けると、三方向を壁に囲まれながら一方向を緑地に開いた‘テラス’に出ます。テラスの床はウッドデッキです。椅子に腰かけて‘テラス’で過ごすのも気持ちが良いと思います。

ダイニング

この‘テラス’を挟んで、母娘はお互いの様子を知ることも出来ます。高齢者が住む二世帯住宅において、世帯同士がこういった距離感で暮らす良さもあると考えました。

テラスからの眺め

敷地を中央から二分するようにして、世帯ごとに棟を分けた計画です。このような構成とした背景の一つに、相続に対する配慮があります。お施主さんの一人であるお母さんには、二人の娘さんがいらっしゃいます。もう一人のお施主さんと、その妹さんにあたる方です。この先で二人の娘さんが相続する事も考えて、売却や賃貸なども視野に入れて、様々な形で‘この先の選択肢’を増やす事を考えました。例えば、娘さんそれぞれが敷地ごと建物を一棟ずつ相続した上で「それぞれに住む」「妹さんが一棟を売却する」「妹さんが一棟を賃貸にする」等々。

今回の記事につかった写真は、私が記録用に撮影したものです。
暖かい季節になったら、カメラマンさんに写真を撮影してもらう予定です。それらの写真を用いながら、あらためて詳細について書くことが出来ればと考えています。

福島

葛飾区T邸-12(どのようにデザインをしたのか_内部空間について-3)

言うまでもなく、Tさんが経験してきた‘暮らし’や‘空間’を単純に再現しても、今のTさんにとって良い家にはなりません。Tさんの経験を拠り所として、共感できるところを新たなデザインに昇華します。そうして‘今までよりも気持ちよく住める家’の実現を図るわけです。

Tさんにとって‘暗さ’は良い家の条件です。内部空間をデザインするにあたっては、どのような‘暗さ’かを想い描く事が大切になります。Tさんの語り口は「陰を感じる‘仄暗い’空間」といったものでした。とても感覚的ですが、そのように陰に重きを置くよりも「光を感じる‘薄明るい’空間」として‘暗さ’をデザインするほうが、より居心地が良くなるように私には思えました。やわらかい光がうっすらと内部空間を浮かび上がらせる様は‘静かな空間’に似つかわしくもあります。それは日本建築における光のあり方の一つであるようにも思います。私は、具体的なデザインを通して、Tさんにその旨をお伝えしました。

リビング・ダイニングの漆喰壁にひろがる光

リビング・ダイニングの漆喰壁に射す光

「印象的に光を感じられる内部空間とするには、自然光を反射する‘まとまった大きさの壁’があると良い」と思うことがあります。そして、その壁にどうやって自然光を反射させるのかによって、印象が決まるようにも思います。
全ての部屋において、その空間の広がりに見合った‘まとまった大きさの壁’を設けるように心がけました。そこに自然光を反射させています。特にリビング・ダイニングには、しっかりと‘まとまった大きさの壁’を設けました。この壁に自然光を入れる開口部として、玄関の‘障子’を当てています。‘障子’越しの自然光が漆喰壁に反射するさまは、どこか粛然とした様子です。

リビング・ダイニングに開放感や明るさが欲しい時には、この‘障子’を開けます。玄関の‘格子戸’と‘障子’との間は80cmほどになります。‘格子戸’から道路までは1mほどです。‘障子’を引ききって開け放つと、リビング・ダイニングが行き成り道路とつながる印象となるように思いました。道路に人通りが無いとは言え、これではあまり雰囲気が良くありません。この問題を解決するために‘障子’は‘猫間障子’にしました。‘猫間障子’の固定された上半分が、道路からの視線を遮ります。開閉する下半分は、外への視線と外からの光を調節します。

こういった視線や光の調節の仕方もまた、日本建築らしさのある一面のように思います。

福島

葛飾区T邸-11(どのようにデザインをしたのか_内部空間について-2)

リビング・ダイニングは‘敷目天井’と‘唐松フローリング’と‘漆喰壁’で構成された空間です。‘敷目天井’と‘唐松フローリング’は、空間に広がりを感じられるように、部屋の長手方向に沿って張りました。この張り方には、他にも意味を持たせています。天井と床の目地を、三畳間の間口に平行にしているのが要です。‘床挿し’をしないという考え方があります。「和室においては‘畳の縁’や‘天井の竿縁’などの直線に見える部位を、‘床の間’に向かって伸びるように(挿すように)つくらない」という決まり事のような考え方です。一階の空間構成では、少し前の日本でよく見かけた和室を意識しています。LDKはいわゆる和室ではないのですが、三畳間を‘床の間’に見立てて‘床挿し’をしないようにしたわけです。三畳間そのものも‘床の間’を意識してデザインしました。窓まわりは‘書院’のように、収納は‘床脇’のように、仕切りは‘床框’や‘落し掛け’のように、そういったデザインの積み重ねで、日本建築らしさを出したいとも考えました。

日本建築らしさ

床脇のようにデザイン

かつての日本建築において、今で言うデザインをするにあたり、さまざまに決まり事のようなものがあったと考えられます。それらが生まれる背景もあったはずです。そしてその決まり事に沿ったデザインは、時世に応じて意味を持っていたと思います。今日において、そのデザインと意味が有効か否かを問うのは難しいところです。既にそのデザインを目にする機会は少なくなり、ましてや生活の中でその意味を感じる事は無くなりつつあるように思います。そうなると、日本建築らしくデザインする事を躊躇してしまうわけです。では何故、T邸においては日本建築らしさを出そうとしたかと言えば「少なくともTさんの経験には、そのデザインが影響を及ぼしている」と感じたからです。そして「この家では、日本建築の考え方を活かした‘抑制の効いたデザイン’によって、Tさんが肌で感じる‘静かな空間’をつくることが出来る」と考えました。

福島

葛飾区T邸-10(どのようにデザインをしたのか_内部空間について-1)

‘静かな空間’にしたいと考えました。

初めてご要望を伺った頃から、Tさんは「明るい部屋は居心地が悪い。暗い部屋にしたい。」とよく仰っていました。それは単純に‘日射しや照明などの光の加減’として語られていたと思います。しかし、打合せを重ねていく中で、私はそこに別のニュアンスを感じるようになっていきました。「Tさんにとって‘暗さ’とは‘落ち着いた雰囲気’を象徴するものなのではないか」と…。そして「それは私が思う‘静かな空間’によって成り立つのではないか」とも考えるようになります。

このころ‘静かな空間’について思うところがあり、デザインの時機をうかがうようにしていました。住宅のデザインとは、それを望むお施主さんがいて、それに相応しい条件が整う事で、はじめて成立するように思います。T邸はその時機であると考えたわけです。

では私が思う‘静かな空間’とは何か? とても感覚的なものなのですが、‘抑制の効いたデザイン’にする事が大切になると思っています。奇をてらう事なく、お施主さんに馴染みのある材料や慣れた空間構成を活かすデザインです。

Tさんの経験を拠り所として、私が共感できるところを新たなデザインに昇華していきます。もちろん光に対する要望にも配慮をして、薄明るく内部空間が浮かび上がるようにもしています。これまでの暮らしぶりから、その空間は何処か日本的情緒をまとう事になります。

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