タグ別アーカイブ: 都市型狭小住宅

葛飾区K邸-4(一人暮らしと家の大きさ)

一人暮らしの一軒家を限られた面積で建てるにあたって、どんなプランなら快適に暮らせるのかと考えます。できるだけ部屋を広くみせるのであれば、浴室に洗面もトイレも入れたワンルームマンションのような平面もあり得るのかもしれません。しかし、母娘お二人には相応しくないように思われます。ワンルームマンションの様では暮らしにメリハリがなくなり、気持ち良く過ごせないと考えました。

対面式キッチン

キッチンや浴室・洗面室・トイレ等のサニタリーは、それぞれ独立して設けるほうが快適そうです。水回りにはそれなりに面積を割く事になります。他の部屋については、昼の空間と夜の空間に分けるようにしました。そうする事で暮らしにメリハリが生まれると考えたからです。

サニタリー

設計に着手した際に、母娘それぞれの一人暮らしのお住まいを拝見させていただきました。お二人とも無駄な物は持たず、うまく整理整頓をしながら暮らしていらした印象です。そこで収納の面積を必要最低限に設定して、出来るだけ部屋の面積を確保する事にしました。
年を重ねて体の自由が利かなくなる事もあるかもしれないと考えて、睡眠や着替えのための夜の空間である寝室の面積確保を優先しました。4.5帖ほどは必要です。

娘の寝室

残りの面積5.5帖で昼の空間を成立させる事となります。この面積でリビングダイニングと呼べる部屋をつくるのは無理があります。多目的に使う個室のイメージで、昼の空間を成立させようと考えました。それまでの御二人の暮らしぶりを鑑みて、それぞれの昼の空間のあり方を模索します。お母様の家については、大きなテーブルを部屋の中心に据えて、窓辺に書斎コーナーのあるレイアウトにしました。娘さんの家については、壁に沿ってモノを並べて部屋の中心を空けるようにして、対面式キッチンに向かってダイニングコーナーのあるレイアウトにしました。

母の昼の空間

娘の昼の空間

福島

葛飾区K邸-3(母娘の距離)

この敷地に建っていた二階建ての古い一軒家で、お母様が一人暮らしをしていました。娘さんが同居を決めたのを機に、家を建て替える事となります。

まずは御二人に相応しい‘同居のあり方’を模索していきます。私が初めて打合せをさせて頂いた時には、既に母娘それぞれが独立して暮らす二世帯住宅のイメージを持っていらっしゃいました。二人とも一人暮らしに馴染みがあるし、自分の空間で好きに暮らすのが快適そうです。検討案は単身者用の共同住宅に近いイメージになっていきます。いくつかの案を比較しながら、それぞれの世帯の距離感を探ります。できるだけ広い家に住むのであれば、二階建て案が適していると考えられます。お母様の体力を考慮に入れると、二階建ての場合は娘さんが上階に住むのが良さそうです。とは言え、娘さんにとっても二階に上がる事はそれなりに大変ではあります。それに階ごとに世帯をわけると、母娘の距離が遠い印象もあります。母娘の年齢や単身で一世帯という条件を考えると、常にお互いの気配を感じられるようにしたいし、声が届くようにはしたいところです。そこで、平屋の二世帯住宅の可能性を探る事になりました。

二棟の家

敷地条件を考えると、一世帯当たりの面積に余裕はありません。おのずと単身世帯に最低限必要な面積を考えながらの設計となります。その上で二世帯が付かず離れずのプランを検討していきます。結果的に、それぞれの世帯を一軒家と見なした案に落ち着きました。二つの家がテラスやアプローチを挟んで独立する配置にして、それを共有玄関で繋ぐプランです。

テラスを挟んで二棟が並ぶ

アプローチ

共有玄関

福島

葛飾区 T 邸-6(どのようなプランニングをしたのか)

具体的なプランニングですが、最も特徴的なのは‘玄関’の在り方かもしれません。T邸の‘玄関’は、雰囲気や使い勝手を‘縁側’のようにしました。「リビングに‘縁側’を設けて、そこから掃出し窓をくぐって家に出入りする」イメージです。
Tさん‘たっての希望’である‘木製の引違い格子戸’を設けられる位置は、家の防火に関連する法(延焼の恐れのある部分)によって、道路側のほぼ中央に決まります。狭小地ながら駐車スペースの要望もあり、採光も道路側を当てにする事になります。これらの前提条件で、効率よくまとまった大きさのリビング・ダイニングをつくるには、‘玄関’を簡素化するのが有効だろうと考えました。この簡素化を‘縁側’のイメージで実現しようという着想です。‘玄関’とリビング・ダイニングの間は‘縁側’らしく‘障子’で仕切ります。
家への出入りを楽にするため、出来るだけ‘玄関’の床の段差を無くしました。車椅子でも楽に家へ出入りできるようになっています。

和室の戸襖を開けたところ

和室の戸襖を閉めたところ

狭くても良いので畳のある床が欲しいという御要望もあったので、小上がりのある3畳の和室を設けました。普段は三枚の戸襖を開けて(戸袋に引き込みます)、リビング・ダイニングと一体感を持った使い方をします。三枚の戸襖を閉める事で、寝室としても使える想定です。これにより一階だけで生活を完結させる事ができます。この和室は小さいがゆえに、畳に寝る良さとベッドに寝る良さを併せ持った使い勝手になると考えています。

カウンターと出窓越しに見る緑

キッチンは’背が高いカウンター’と’エアコンを仕込んだ垂れ壁’でリビング・ダイニングとの間を仕切っています。Tさんにとって快適なキッチンとリビング・ダイニングとの距離感を考えて、このような仕切り方(開き方)にしました。壁付けのシステムキッチンを設置して、まわりにTさんの暮らし方に合った出窓やカウンターや収納を設けて、高密度な作業スペースにしています。ダイニングテーブルからは、カウンターとキッチンの出窓越しに隣地の緑が見えるようにしました。

多目的に転用できる納戸(ロフト有)

二階には多目的に転用できる納戸を設けました。お母様の部屋と息子さんの部屋の間に配置して、双方から使える納戸にしています。廊下からも入れるようにしているので、個室としても成立します。納戸の中を家具で仕切るなどする事で、さまざまな使い方が想定出来ます。息子さんが結婚して家族が増える可能性を考慮しての事です。

福島

葛飾区 T 邸-5(どのようにプランニングをするのか)

T邸は都市部の狭小地に建つ狭小住宅になります。70代のお母様と40代の息子さんが暮らす家です。ゆくゆくは息子さんが家を相続する予定ですが、お母様が暮らしやすくする事を優先するように求められていたように思います。

私は「今はもちろん、この先も暮らしやすい家にする事が大切だ」と考えています。先の事を考えるときに、身体の変化への配慮も必要ではないかと思います。人はだんだんと‘疲れやすくなったり’‘重いものを持てなくなったり’‘手や足が以前より上がらなくなったり’するものです。そんなふうに変わっていく身体にたいして、それほど負担がかからない暮らし方を考えるように心がけています。‘暮らしに無駄な動きが生じないようにする’‘維持管理に手間がかからないようにする’‘一階だけで生活が完結できるようにする’‘床に段差を無くす’‘建具を引戸にする’といった方針でプランニングします。「効率の良い合理的な家をつくる」とも言えます。特殊な方法を採用しているわけではなく、丁寧にプランニングしているという事になるかと思います。

引違い玄関前

特に狭小住宅では「‘小さくて’効率の良い合理的な家をつくる」となります。小さい家の方が、無駄に動く必要もなく、掃除もメンテナンスの範囲も狭くなり、楽に暮らせるという事になりそうです。しかしただ単に小さい家にすると「なんだか息苦しくて快適ではない」となりかねないので、お施主さんの暮らし方を見ながら工夫をします。その際には「住む人の手が行き届く範囲を見極める」「住む人が楽しくできる家の事を把握する」といったところがとても大切になってきます。庭があると、花を植えて楽しめる人もいれば草むしりが嫌になる人もいます。家族の顔が見えるキッチンだと、リラックスして家事を出来る人もいれば生活にメリハリが無くなる人もいます。

狭小地の場合は、敷地の形状もプランニングにとても大きく影響してきます。敷地条件に合わせながら、Tさんの暮らし方に相応しい工夫をしていきます。

階段室と和室の引戸を閉じたところ(奥のカウンター前が階段室引戸)

福島

homifyの特集記事に江戸川区K邸が掲載されました!

世界の建築やインテリアの情報が見られるサイト「homify」の特集記事に、江戸川区K邸が掲載されました。

https://www.homify.jp/ideabooks/4023764/狭小地に建つ上質な終の棲家

温かみがある自然の素材使いやメリハリあるプランが特長の、コンパクトな家です。ライターさんが写真からこの家のつくりや意図をよく理解してくださって、とてもわかりやすく素敵な記事にしていただいています。

ぜひご覧いただければと思います。

遠山

江戸川区K邸-21(竣工写真)

ホームページの作品ページにK邸の竣工写真を追加しました。
お施主さんが暮らし始めてから三か月が経ったころの写真です。
家具が入った写真からは、暮らしぶりなども垣間見ることができます。
家具については、お施主さんと私達とであれやこれやと楽しく相談しながら決めました。
一緒にインテリアショップめぐりをして、現場で家具の寸法を出してみて、
「これは入らないかなあ。」「無理したら入れられますけど、こっちのほうがより良いでしょうねえ。」なんて会話をしながら選んだ家具です。
使い勝手もデザインも、この家にしっくりと納まり良い雰囲気になったと思います。
他にも、これまでお見せできなかった屋上の写真などもあります。
ぜひご覧ください。
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福島

 

江戸川区K邸-20(植栽)

外構に植栽が入り、K邸が完成しました。植栽によって、家がより素敵になりました。

「あともう少しで完成です。」とK邸のブログを書いてから、三ヶ月ほど経ちます。前回のブログのすぐ後にお引き渡しとなったのですが、天候の影響などで外構工事が未完成のままに引越しの日を迎えました。Kさんが暮らしはじめてまもなく植栽以外の外構工事が完了したところで、外から見ても家の形が整った印象です。外構写真や外観写真を撮影してK邸完成のブログを書こうかとも考えたのですが、引越ししたばかりの頃はなかなか生活が落ち着くものでもないので、植栽を植えたタイミングをK邸の完成としようと考えました。Kさんとは「荷物など片付いたころに植栽を植えましょうか。」というお話をしており、年末年始の忙しい時期を避けるなどして、ここにきて植栽を植えるタイミングとなりました。

玄関まわり(夕)

玄関まわり(夕)

植栽は「玄関前」と「木塀で囲われたリビング前の庭」に植えました。

玄関前には少し背が高い木を植えて、枝の下をくぐるようにして玄関に入っていくイメージで外構デザインをしています。ここにはハナミズキを植えました。家を設計しているときに「ハナミズキが良いかなあ。」「私もハナミズキが良いと思っていました。」「白ですよね。」「やっぱり。」なんて会話をしながら決めました。ハナミズキには白色とピンク色がありますが、ピンク色の方が強くて手入れしやすいそうです。Kさんは「ピンクも良いかも。」と思われたそうですが、初志貫徹という事で白色になりました。ちなみに、ハナミズキは英語でdogwoodと言います。いわれはともかくとして、ワンちゃんと暮らすK邸に相応しい木のように思えてきます。ハナミズキは秋の終わり頃から冬の終わり頃にかけて植栽に適しているそうなので、今の時期は植えつけに良いようです。これから大きく育って、K邸の暮らしをますます素敵なものにしてくれると思います。

リビング前植栽

リビング前植栽

リビング前の木塀で囲われた庭には、ツツジを植えました。「ツツジが良いですね。」「紫陽花も素敵ね。」といった感じでいろいろと候補が上がったのですが、Kさんはツツジに決めました。小さな庭なので、可愛らしい佇まいが似合います。リビングの障子を開けたときに趣ある植栽が見えると、毎日の暮らしに彩が出る感じです。Kさんは「庭の照明を植栽にあてて、リビングから夜の庭の景色を楽しむのが好きです。」とおっしゃっていました。

リビング前植栽(夜)

リビング前植栽(夜)

Kさんの新居での生活も落ち着き始めたので、家具などが入っている写真を撮影する事にしました。出来る範囲でホームページの作品ページに掲載していくつもりです。今の作品ページにあるK邸の写真は、お引渡し前のものです。こちらもご覧いただき、今後掲載する暮らしのある写真と比較していただくと面白いと思います。

玄関(夜)

玄関(夜)

福島

江戸川区K邸-19(外構工事)

あともう少しで完成です。

内覧会が終わった後に、本格的に外構工事が始まりました。
庭づくりは、「亜鉛メッキを施した軽量鉄骨でつくった板塀の柱」を「地面に埋めた基礎ブロック」に挿してコンクリートで固定をする作業からはじめました。板塀の柱は、木でつくると腐りやすいので、錆びないように亜鉛メッキを施した軽量鉄骨にしました。この軽量鉄骨の柱に杉の角材を抱かせて、そこに杉板を釘でとめます。
次に土間コンクリートを打ちました。その上にタイル下地の敷きモルタルを施工します。玄関の前はタイル張りまで進みました。
あとは「板塀の板戸設置」と「板塀の基礎固め」と「庭のタイル張り」が出来れば工務店さんの工事は完了です。
天候さえ良ければ、三日後には完成します。

階段越しにリビングの掃出し窓を見る

階段越しにリビングの掃出し窓を見る

外構工事がすすむにつれて、だんだんと設計のさいにイメージしていた家になっていく感じです。敷地のまわりをぐるっと歩いてみると、ご近所に新鮮な印象をもたらす佇まいになったように思います。背が高い板塀に囲われた庭を家の中から眺めると、未完成ではあるものの屋外に部屋があるようです。春になったら庭に木を植えて、そこでやっとイメージしていたところまで出来上がります。
春を迎えるころには、お施主さんの生活が色濃く反映されていると思います。じっさいに木を植えるときには、家は私のイメージを飛び越えているのかもしれません。

福島

江戸川区K邸(内覧会、ありがとうございました)

10月8日(土)、9日(日)の二日間、江戸川区K邸の内覧会を開催しました。

沢山の方々に足をお運びいただき、実際の空間を体験していただけました。
お越しくださった方々、工務店の皆様、また内覧会のために真新しい家を快く開放して下さったお施主様のK様、本当にありがとうございました。

9月は雨続きで外構工事が予定通りに進まず、内覧会の時に庭をご覧いただけなかったことは残念ですが、これから竣工写真をホームページ等にアップしていきますので、ぜひそちらで庭と内部空間のつながった雰囲気などもご覧ください。

遠山

江戸川区K邸-18(内部仕上工事ほぼ完了)

内部仕上げ工事がほぼ完了しました。

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キッチンから階段をみたところ

土佐和紙の壁紙を張り、水回りの壁の塗装をし、床に蜜蝋ワックスをかけ、電気設備機器や衛生設備器具を取り付けて、内装工事は「畳敷き」と「可動棚の設置」と「空調設備機器設置」を残すのみです。
仕上げ工事のための内部足場も外して、床もあらわになり、内部空間の様子が一気にわかるようになりました。
良い雰囲気になって嬉しいのですが、追い込み時期にはあれこれと目についたりもして、現場ではいつもより緊張します。今日も現場で監督さんとあれやこれやとつめてきました。
完成したら緊張感もとけて、自分も清々しい気持ちでこの空間を楽しめるようになると思います。

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階段から吹抜けをみたところ

 

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外構工事は始まったばかりです

このところ続いている雨のせいで外構工事もはかどらず、内覧会の時には外構工事が途中の状態になります。せっかくの内覧会にちょっと残念ですが、お施主さんにきちんとしたものを引き渡すことが大切なので、あせらずに工事を進めてもらうように打合せしました。
あと少しで完成です。気を引き締め直して取り組んでいこうと思います。

福島