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葛飾区K邸-3(母娘の距離)

この敷地に建っていた二階建ての古い一軒家で、お母様が一人暮らしをしていました。娘さんが同居を決めたのを機に、家を建て替える事となります。

まずは御二人に相応しい‘同居のあり方’を模索していきます。私が初めて打合せをさせて頂いた時には、既に母娘それぞれが独立して暮らす二世帯住宅のイメージを持っていらっしゃいました。二人とも一人暮らしに馴染みがあるし、自分の空間で好きに暮らすのが快適そうです。検討案は単身者用の共同住宅に近いイメージになっていきます。いくつかの案を比較しながら、それぞれの世帯の距離感を探ります。できるだけ広い家に住むのであれば、二階建て案が適していると考えられます。お母様の体力を考慮に入れると、二階建ての場合は娘さんが上階に住むのが良さそうです。とは言え、娘さんにとっても二階に上がる事はそれなりに大変ではあります。それに階ごとに世帯をわけると、母娘の距離が遠い印象もあります。母娘の年齢や単身で一世帯という条件を考えると、常にお互いの気配を感じられるようにしたいし、声が届くようにはしたいところです。そこで、平屋の二世帯住宅の可能性を探る事になりました。

二棟の家

敷地条件を考えると、一世帯当たりの面積に余裕はありません。おのずと単身世帯に最低限必要な面積を考えながらの設計となります。その上で二世帯が付かず離れずのプランを検討していきます。結果的に、それぞれの世帯を一軒家と見なした案に落ち着きました。二つの家がテラスやアプローチを挟んで独立する配置にして、それを共有玄関で繋ぐプランです。

テラスを挟んで二棟が並ぶ

アプローチ

共有玄関

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世田谷区K邸リフォーム-3(どのような能力が作り手に求められるか)

リフォームと新築とでは、設計の進め方が異なります。そのため、建築家に求められる能力もまた異なるように思います。
リフォームでは、既存家屋がどのように作られたのかを把握する事が大切です。築年数が経っている場合は、古い建て方を理解している必要もあります。どのように作られたのかを知るためにも、そこにどのように手を加えることが出来るのかを判断するためにも、建築家には〈人の手で出来る作業に対する知識や感覚〉が求められます。そして、それをデザインとして昇華する能力もまた求められると思います。

ダイニングから見た配膳カウンター

工務店さんに求められる能力もまた同様です。とりわけ〈いつもとは違う臨機応変な対応〉が必要になりますが、これは住宅を施工する多くの工務店さんにとって難しいように思います。工事中には、殊に大工さんにかかる負担は大きく、いつもよりも〈知識〉〈経験〉〈感覚〉が求められます。出来る事なら、リフォームする既存家屋が建てられた頃に一線級であった大工さんに面倒を見てもらいたいところです。
K邸リフォームの場合は、馴染みの工務店さんにお世話になりました。大工さんはお二人で、共に45年前には活躍をしていた70歳ほどのベテランになります。どちらも期待にたがわぬ仕事ぶりでした。

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