ちょっと専門的な話です。
前回のK邸小屋組みの話を書いてしばらくたってから、何人かの構造家と木造の小屋組みについて話をする機会がありました。そのほとんどが「昔の‘筋違’や‘火打ち梁’は地震に対してそれほど効果を期待できない。」という見解でした。
特に友人の山口和弘さんとは、あれこれと話をしました。彼は木造を専門とする構造家で、なんとなくおしゃべりしているだけでもとても勉強になります。
山口さんとの会話の概略は、以下のようなものです。
「少し前まで、構成部材全体でなんとなく変形を抑えるのが小屋組みの作り方だったと考えられる。」
「そもそも、‘筋違’や‘火打ち梁’で堅い面を作って水平荷重に強い木造軸組みをつくろうという発想は、基本的には明治時代以降の考え方だと言える。」
「その明治時代以降の小屋組みの考え方についても、実際のところ‘火打ち梁’や‘雲筋違’が面剛性を十分に高めているか(地震などの水平力に対して効果があったか)というと疑問はある。」
「昔は‘筋違’や‘火打ち梁’を釘打ちでとめているが、この方法ではあまり面剛性を高める事は出来ない。」
「‘火打梁’をボルトで留めるとそれなりの効果を見込めるが、かなりの数の‘火打梁’が必要であり、実際のところ現実味が乏しいのではないか。昔の建物には、そこまでの数の‘火打梁’は入ってはいない。」
「結局は‘火打ち梁’や‘雲筋違’を使っても、小屋組みは構成部材全体でなんとなく変形を抑えていたと考えられる。」
「小屋組みに‘水平荷重’を負担させる事を論理的に強く意識するようになったのは20年くらい前からだと言える。」
人は長い間にわたって木と向き合ってきましたが、今もこんな風に‘ああでもないこうでもない’と工夫を重ねています。昔の見方にも今の見方にも説得力はあります。私達が「木をどのように捉えるのか?」によって、これからも木は様々な姿を見せてくれるだろうと期待もします。私も木の中に何かを見つけられるように頑張っていきたいと思います。
福島