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江戸川区K邸-19(外構工事)

あともう少しで完成です。

内覧会が終わった後に、本格的に外構工事が始まりました。
庭づくりは、「亜鉛メッキを施した軽量鉄骨でつくった板塀の柱」を「地面に埋めた基礎ブロック」に挿してコンクリートで固定をする作業からはじめました。板塀の柱は、木でつくると腐りやすいので、錆びないように亜鉛メッキを施した軽量鉄骨にしました。この軽量鉄骨の柱に杉の角材を抱かせて、そこに杉板を釘でとめます。
次に土間コンクリートを打ちました。その上にタイル下地の敷きモルタルを施工します。玄関の前はタイル張りまで進みました。
あとは「板塀の板戸設置」と「板塀の基礎固め」と「庭のタイル張り」が出来れば工務店さんの工事は完了です。
天候さえ良ければ、三日後には完成します。

階段越しにリビングの掃出し窓を見る

階段越しにリビングの掃出し窓を見る

外構工事がすすむにつれて、だんだんと設計のさいにイメージしていた家になっていく感じです。敷地のまわりをぐるっと歩いてみると、ご近所に新鮮な印象をもたらす佇まいになったように思います。背が高い板塀に囲われた庭を家の中から眺めると、未完成ではあるものの屋外に部屋があるようです。春になったら庭に木を植えて、そこでやっとイメージしていたところまで出来上がります。
春を迎えるころには、お施主さんの生活が色濃く反映されていると思います。じっさいに木を植えるときには、家は私のイメージを飛び越えているのかもしれません。

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江戸川区K邸-6(上棟)

梅雨の晴れ間の上棟です。

木造軸組(柱や梁など)の材料は、プレカット工場とよばれる木材の加工場で、半日かからずに家一軒分が加工されます。加工した材料は、現場に搬入しておよそ一日で家の形に組み上げられます。

仮設足場の上から軸組材料を搬入

仮設足場の上から軸組材料を搬入

上棟にいたる木造軸組の施工方法は、‘建物形状’や‘敷地条件(形や接道)’等によって異なります。K邸の場合は、前日までに‘完成した基礎への土台設置’と‘仮設足場の組み立て’を終えて、上棟日を迎えました。当日の作業は少し大きめのクレーン車をつかって、仮設足場の上から一階の軸組み材料を吊り降ろして基礎の上に搬入するところからはじめます。

搬入した材料で一階柱と二階床梁を組み上げて、水平垂直をしっかりと測定して軸組の歪みを補正します。きちんとした水平垂直を維持するために仮の筋交を入れて建物の動きをとめてから、金物と二階床下地合板を施工して軸組の形を固定します。次に、二階の軸組材料を二階の床下地の上に搬入します。二階の軸組を組み上げて、歪みを補正して、金物と屋上階床下地合板の施工で軸組の形を固定して、上棟です。

単純な作業に見えますが、K邸にはいくつか独特の配慮をしなければならない点があり、よりいっそうの緊張感をもって作業に臨む必要があります。

一階の床仕上げを基礎スラブのすぐ上に張る(床下が無い)都合上、部屋内については基礎スラブの上に土台を設置します。そうなると、基礎スラブの‘高さ’や‘水平’や‘平滑性’の精度がとても大切になります。これらの精度をだすために、基礎スラブの上にセルフレベリング材(高い流動性で自己水平性をもつ材)を流して出来るだけ平らな床下地を設けるようにしています。それでも屋外でセルフレベリング材を使用してみると、場所によっては3mmほどの不陸(高低差)が生じてしまいます。これが土台を介して一階柱の長さに影響してきます。現場で微調整をしながら、柱を設計図よりも3mmほど短く刻まなくてはならないところがありました。

基礎スラブに設置した土台の上に組み上がる軸組

基礎スラブに設置した土台の上に組み上がる軸組

部屋の中に柱が出てくる‘独立柱’や‘真壁’の部分もあり、ここにはきれいに表面仕上げをした材を用いるので、上棟の作業で手や足の跡が付いて汚れないように気を使いながら作業をします。内部空間の印象を決める‘ツーバイテン材のアラワシ梁’についても、汚れないようにするのはもちろん、幅38mmと繊細な梁ゆえに釘の打ち方や他の梁への打ち込みでより丁寧な作業がもとめられます。

アラワシ天井になるツーバイテンの梁

アラワシ天井になるツーバイテンの梁

梅雨の初めの上棟ゆえに、雨対策も必要です。十分に乾燥された柱や梁は、少し濡れてもきちんと乾くと言われています。しかし、床下地に使われる合板が濡れてしまうと、きちんと乾かずに傷んでしまう事があります。私たちの現場監理では、特に床下地合板は濡れないように現場を進めています。現場監督さんと相談をしたところ、軸組の周りを養生シートで覆い、仮設足場に屋根を設ける事になりました。

屋根付き仮設足場で雨養生

屋根付き仮設足場で雨養生

上棟してみると、K邸の特徴である‘シンプルで明快な空間構成’と‘軸組を活かしたデザイン’がすでにはっきり感じられました。この空間が素材感をまとうのが楽しみです。

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上棟した軸組

上棟した軸組

 

江戸川区K邸‐6(基礎コンクリート型枠脱型)

基礎のコンクリート型枠を外しました。天気予報が少し外れてしまったようで、雨が降ったりやんだりという天候の中での作業になりました。

型枠を外す前 雨天

型枠を外す前 雨天

作業前に現場に着くと、前日の雨が基礎の中にたまってプールのようになっていました。コンクリート打継ぎ部分もきちんと施工できた結果、隙間のないしっかりとした基礎になっているので、プールのように水がたまったわけです。

型枠を外しながら、あれこれやって溜まった水も基礎の外に出しました。基礎内側の型枠のアクが溜まった水に染み出てきたり、基礎外側の型枠を外す時に泥がはねたりと、ちょっと見た目には汚れた印象ではありますが、基礎はなかなか良い仕上がりでした。次の工程前の晴れた日に掃除をしたら、かなりきれいな姿になります。

 

型枠を外した後 雨がやみました

型枠を外した後 雨がやみました

型枠を外すとすぐに、基礎の中に埋めた(先行配管した)排水管などを基礎外の配管につなぐ作業に入りました。このつなぎ作業をするためには、基礎外断熱のスタイロフォームに穴をあける事になります。設備業者さんが穴をあけるのですが、配管にぴったりのきれいな穴をあけることは難しく、配管とスタイロフォームの間に隙間が出来てしまいます。この隙間をそのままにすると、基礎の断熱性能が大幅に落ちます。基礎のこの付近だけ建物の中で結露が起こる可能性もあります。そこで、次の工程で基礎外断熱のスタイロフォームをモルタル塗りで保護する前に、この隙間を現場発泡ウレタン断熱材で埋めて断熱性能を確保します。このあたりを現場監督さんと確認して、しっかりと次の工事に備えます。

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基礎の外に配管をつなぐ作業

基礎の外に配管をつなぐ作業

江戸川区K邸-5(コンクリート打設)

コンクリート打設開始

コンクリート打設開始

江戸川区K邸の基礎コンクリート打設です。天候にも恵まれ、無事にコンクリート打設が出来ました。

木造住宅の基礎コンクリートは、工事日を変えて二回に分けて打設するのが一般的です。一回目はスラブ(基礎鉄筋コンクリート造の床)と地中梁(スラブより下に埋まる梁)などのコンクリートを打設して、二回目は基礎立ち上り(壁のように垂直な部分)を打設します。スラブと立ち上りを同じタイミングでコンクリート打設としないため、スラブと立ち上りの境目の打継部分が厳密に一体化しないリスクもあります。ここが一体化しないと、外部から基礎の中に水がしみてくることもあります。そのような事が無いように、私たちはこのコンクリート打継部分に止水材をいれて対応をします。

K邸の基礎もスラブと立ち上りでコンクリート打設を二回に分けるのですが、スラブに40cmほどの段差があるため工事が少々やっかいです。スラブのコンクリート打設をしてから立ち上りのコンクリート打設をするという進め方をしようとすると、次のような手順で工事日を変えて三回に分けてのコンクリート打設になります。

  1. ‘低いスラブのコンクリート’を打設する。
  2. ‘高いスラブのコンクリート’と‘低いスラブの立ち上がりの途中までのコンクリート’を打設する。
  3. ‘高いスラブの立ち上がり’と‘低いスラブの立ち上がりの途中から上のコンクリート’を打設する。

このように進めると地盤面より下に打継が増えるので、基礎の性能も施工精度も落ちるリスクがあります。そこでコンクリート打設を二回で終わらせることが出来て、性能も施工精度も高い基礎をつくれるように、こういったケースでは浮型枠を使う施工方法にします。浮型枠というのは、スラブと立ち上りに同時にコンクリートを打つさいに使う‘宙に浮いたようにセットする型枠’のことをさします。

浮型枠とコンクリート打設

浮型枠の設置とコンクリート打設

コンクリートは固まる前でもある程度の堅さと粘り気を持っています。浮型枠を使う施工方法は、この性質を活かしたものだと言えます。コンクリートがもっと水っぽいものだとしたら、‘高いスラブ’と‘低いスラブ’を同時にコンクリート打設しようとしても、どっちも高いスラブにそろった床面になっていまいます。計画している基礎に相応しい施工方法を検討する事は大切です。

浮型枠にコンクリート打設

浮型枠にコンクリート打設

基礎スラブのコンクリート打設が終わったら、これから続く工事の施工精度を上げるためにも、コンクリートの表面をコテできれいにならします。こんな感じで流し込んだばかりのコンクリートの上に載っても、人が浮くくらいにコンクリートはある程度の堅さと粘り気があるものです。

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江戸川区K邸-3(地盤改良)

江戸川区K邸の地盤改良工事です。少し気になる事があったので、工事完了まで立ち会う事にしました。

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もともと木造三階建て住宅が建っていた敷地です。この既存建物の工事をした25年前にも地盤調査をしています。当時の調査資料によると、地盤はそれほど良くありません。そのため、もともとあった建物を解体したら、基礎の下に‘杭’か‘地盤改良の跡’が出てくると予想していました。もとの建物の杭など出てきたら、地盤状況を安定させる工事が難易度の高いものになります。「さて、どうしたものか」と、少し緊張しながら解体工事の最終段階に立ち会いました。結果はちょっと意外で、基礎下にまともな杭も地盤改良跡もありませんでした。もともとあった建物は、きちんと支えられていなかったわけです。お施主さんが「もとの建物の外壁にひびが入ったので、外壁補修工事をした。」と仰っていたので、きちんと地盤が安定していなかった影響はあったと考えられます。

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新しい家をきちんとしたものにするため、あらためて地盤調査をしました。その結果を踏まえて、セメントによる柱を地中に作る‘柱状改良’という地盤改良をすることになりました。しっかりした地盤まで届くように数十本の柱を地中にたてて、新しい家を支えます。それなりの大きさの重機が入るので、狭小地では難しい工事になります。職人さんが手慣れた仕事ぶりで段取り良く進めているので、そうは見えないかもしれませんが。

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地盤改良工事にあたり気になっていたのは、敷地に‘井戸の跡のように見える部分’や‘もとの家が建つ前から埋まっていた浄化槽の撤去跡’などがあり、そこにも予定通りの‘柱状改良’が出来るかどうかという点でした。結局もろもろ問題は無く、無事に工事は予定通り進みました。余談ですが、笑顔が素敵なとても礼儀正しい職人さんたちでした。

江戸川区K邸-2(地鎮祭)

今日は江戸川区K邸の地鎮祭でした。春らしい陽射しに恵まれて、とても気持ちの良い地鎮祭です。お施主さん、工事を担当する山庄建設さん、私たちで、「良い家にしましょう。」とあらためて気持ちを一つにする良い機会になりました。

江戸川区K邸地鎮祭

江戸川区K邸は、狭小地に建つ三階建て住宅を二階建て住宅に建て替える計画です。ご夫婦二人でくらす家になります。計画を検討する初めの段階で、「これから夫婦で年齢を重ねていくにつれ、広い家を維持するのは大変になるだろう。」と考えました。そこで、小さくて単純明快な使い勝手とする事で、維持がしやすくて暮らしやすい家になるようにしました。

模型(内観)

模型(内観)

もとのお住まいにお邪魔して最初の打合せをしたとき、暮らしの中に好みのデザインの方向性があるように感じたので、そこも大切にしたいと思いました。しっくりくるデザインに囲まれると、気持ち良く生活できるものです。K邸のデザインは、そこはかとなくロマンチックな雰囲気を感じられるものにしたいとも思いました。

模型(外観)

模型(外観)

検討の初期の段階でイメージがまとまった感じです。そのイメージ通りになれば、とても良い家になると思います。これからの現場監理もていねいに頑張っていこうと思います。

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小屋組みリフォームの話-2

ちょっと専門的な話です。

 

前回のK邸小屋組みの話を書いてしばらくたってから、何人かの構造家と木造の小屋組みについて話をする機会がありました。そのほとんどが「昔の‘筋違’や‘火打ち梁’は地震に対してそれほど効果を期待できない。」という見解でした。

特に友人の山口和弘さんとは、あれこれと話をしました。彼は木造を専門とする構造家で、なんとなくおしゃべりしているだけでもとても勉強になります。

 

山口さんとの会話の概略は、以下のようなものです。

「少し前まで、構成部材全体でなんとなく変形を抑えるのが小屋組みの作り方だったと考えられる。」

「そもそも、‘筋違’や‘火打ち梁’で堅い面を作って水平荷重に強い木造軸組みをつくろうという発想は、基本的には明治時代以降の考え方だと言える。」

「その明治時代以降の小屋組みの考え方についても、実際のところ‘火打ち梁’や‘雲筋違’が面剛性を十分に高めているか(地震などの水平力に対して効果があったか)というと疑問はある。」

「昔は‘筋違’や‘火打ち梁’を釘打ちでとめているが、この方法ではあまり面剛性を高める事は出来ない。」

「‘火打梁’をボルトで留めるとそれなりの効果を見込めるが、かなりの数の‘火打梁’が必要であり、実際のところ現実味が乏しいのではないか。昔の建物には、そこまでの数の‘火打梁’は入ってはいない。」

「結局は‘火打ち梁’や‘雲筋違’を使っても、小屋組みは構成部材全体でなんとなく変形を抑えていたと考えられる。」

「小屋組みに‘水平荷重’を負担させる事を論理的に強く意識するようになったのは20年くらい前からだと言える。」

 

人は長い間にわたって木と向き合ってきましたが、今もこんな風に‘ああでもないこうでもない’と工夫を重ねています。昔の見方にも今の見方にも説得力はあります。私達が「木をどのように捉えるのか?」によって、これからも木は様々な姿を見せてくれるだろうと期待もします。私も木の中に何かを見つけられるように頑張っていきたいと思います。

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建築家の独り言-1

恩師である建築家のお墓参りをしてきました。

今日は、黒沢隆先生の祥月命日です。

月日が経つにつれて、大きな何かをなくしたという思いが少しずつ強くなっていきます。

黒沢先生から宿題も出ていたのですが、まだ手を付けてもいません。

もう黒沢先生に見ていただくことは出来ませんが、宿題にもきちんと向き合おうと思っています。

 

福島

小屋組みリフォームの話-1

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ちょっと専門的な話です。

この写真は、K邸リフォームの寄棟(よせむね)屋根の小屋組みです。築60年ほどの既存家屋の解体工事が終わった頃に、丸太梁の小口に錐(きり)が刺さっていたのが気になって撮ったものです。

友人の建築家にこの写真を見せたところ、錐よりも小屋組みに目が行ったようです。彼は「平面的に交差する小屋梁が‘渡り腮(わたりあご)’で組まれていないし‘雲筋違(くもすじかい)’も無い。この小屋組みをつくった昔の大工さんはどういうつもりだったのかな?」と言っていました。‘渡り腮’と ‘雲筋違’はスケッチに描いたようなものです。小屋組みの変形をおさえるために使われます。

「元の小屋組みは、地震や風などの‘水平荷重’に対して弱いんじゃないか?」と彼は言っているのだろうと思ったので、「‘鉛直荷重’(屋根や雪の重さ)を支える事にばかり気を使うような仕事は、昔の市井の大工さんには珍しくないんじゃないかと思っている。昔の小屋組みのけっこう多くは‘水平荷重’に対して弱いと思う。」といった旨の返事をしました。

 

私は「建築家や大工さんの多くが、小屋組みに‘水平荷重’を負担させる事を論理的に強く意識するようになったのは最近の話なんじゃないか。」と思っています。それ以前から‘渡り腮’や‘かぶと蟻がけ’などの仕口を駆使しながら‘雲筋違’や‘火打ち梁’などを入れて小屋組みを作るのは、それらの部材にのみ‘水平荷重’を負担させる事を考えていたわけではなく、そういった部材と仕上げ材も含めた他の部材で‘全体的になんとなく小屋組みの変形をおさえる’ようにして、小屋組み全体でなんとなく‘水平荷重’を負担する事を期待していたからなんだろうと思っています。なんとなく、です。なんとなくというのは、客観性がある方法論ではないという程度の意味です。その昔にK邸を作った大工さんは、‘渡り腮’も‘雲筋違’も無しでなんとなく小屋組みの変形をおさえられると、なんとなく考えてたんじゃないかと想像したわけです。友人が感じたように‘水平荷重’に対する意識があまりない大工さんだったんだろうなと思います。

 

K邸の小屋組みについては、改修前よりもしっかりと‘水平荷重’を受けられるような対応をしました。屋根面は下地合板でしっかりと固めて、交差する小屋梁は金物で緊結して、小屋束を補強した上で小屋束間に耐力壁と同じ仕様で筋違を入れました。

今の新築の家ではプレカット材と厚い合板で構造体を作るので、リフォーム以外ではなかなかこんな小屋組みの作り方をする機会も無いんだろうと思っています。古い木造の家のリフォームは、昔と今の‘技術’や‘考え方’を整理するという面もあり、なかなかに難しいものです。

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渡り腮スケッチ

和小屋