今回の確認で、思っていたよりも杉板の黒みが強いように感じました。敷地周辺には、大きな幹線道路が複数あり、幹線鉄道があり、広い河川敷をもつ大きな川もあります。そういった影響で砂塵等も含んだ大気汚染物質の量が多く、杉板に付着した量も多いのではないかと推測しました。腐朽菌の影響も見られず、大気汚染物質等の付着量が多いだけであれば、さほど耐久性に影響はないように思われます。
もとより「杉板外壁はできるだけ経年変化に任せるようにしよう」と考えていました。とは言え、経年変化の進みが早いように感じたこともあり、「経年変化や黒みについての考え方の妥当性を確認したい」「現状を踏まえた上で、今後のメンテナンス方法を検討したい」と思いました。そこで、K邸で使用した杉材〈木もちe-外壁〉を扱っている〈小川耕太郎∞百合子社〉さんに相談をしました。小川さんに現状の写真を見て頂くと「黒みが強いと感じた」「黒みが強くても耐久性に問題は無いと考えている」との事でした。さらにメンテナンスについて伺ったところ、「黒みが気になるのであれば、外壁を洗浄する手もある」と、洗浄方法についてご教示いただきました。具体例として「(小川さんの)自宅が築10年の頃に、外壁の杉板を高圧洗浄機で洗った」というお話もしてくださり、その洗浄の様子を撮影した動画を見せていただきました。焦げ茶色の表面を洗浄すると、まだ赤みが残る杉の質感があらわれてきます。大気汚染物質がいかに杉板表面に黒みを付けているのかを実感できる動画でした。
杉板外壁を洗浄するのかどうかも含めて、メンテナンスについてKさんご夫婦と相談をして決めることにしました。まずは現状に対するお考えを伺いました。ご夫婦ともに「杉板外壁の経年変化を楽しんでいる」「今の雰囲気もとても気に入っている」「経年変化の色ムラも味があって良いと思っている」とおっしゃっています。紫外線による杉板の変色だけではなく、大気汚染物質等が付着するのも味のうちだとお考えのようでした。それであれば、急いで外壁洗浄をする必要もないように思えます。しばらくは、この雰囲気を楽しんでいただくことになりました。
福島