タグ別アーカイブ: 木の外壁

葛飾区 T 邸-4(どのように設計に取り組んだのか)

どのように設計に取り組んだのかを振り返ります。

Tさんは家への思い入れがとても強い方で、初めてお会いした時から何か訴えるような話しぶりだった事を覚えています。日々の生活で家に対して感じている事を、時に具体的に時に漠然と、熱心に話して下さいました。
打合せをする姿は‘よく目にする近頃の家に対しての違和感’や‘暮らしに向き合う姿勢’をご自身に問うているようでもありました。

一階のリビングダイニング

しばらくすると私は「Tさんが持つ家に対するイメージ’は、ご自身の体験からくるものだろう」と思うに至ります。
「朝起きたらまず窓を開ける」「決まった時間にぬか床を混ぜる」「季節に合った食事をする」「風呂上がりに体重を測る」そういった事を日々積み重ね、「家に帰ると‘赤い瓦屋根’が迎えてくれる」「‘格子戸の引違い戸’をあけて出入りする」「‘障子’で日射しや視線を調節する」「‘畳’に寝転がり休む」そういった事が日々を豊かにする。
それはTさんが「生まれ育った家」や「夫婦で暮らした家」や「子育てをしてきた家」で体験してきた‘暮らし方’や‘暮らしを支えるデザイン’なのだろうと考えるようになりました。
他にも「あまり明るい家は居心地がわるいのよね」「私が子供の頃は三畳の部屋を与えられていてね、サンジョッコって呼ばれたりしたのよ」「お日様が登る東の方角は、なんだかとても大切に感じるの」といった会話の中に、経験からくる思い入れを感じました。

二階の寝室

T邸の設計は、そういったバラバラに語られるイメージをまとめ上げるように進めたところがあります。まとめるためには軸となる何かが必要になります。それはある種の‘情緒’であったと言えるかもしれません。
江戸川が近く、朝晩と古寺の鐘の音が届く、そこはかとなく風情が残る地域に敷地はあります。この地域で生まれ育ったTさんの家には、それに相応しい佇まいがあると考えました。またそれを求められたようにも思います。私はTさんの経験の中から懐かしさを伴う‘情緒’を感じ取るようにして、この家を設計していたように思います。

福島

江戸川区K邸-20(植栽)

外構に植栽が入り、K邸が完成しました。植栽によって、家がより素敵になりました。

「あともう少しで完成です。」とK邸のブログを書いてから、三ヶ月ほど経ちます。前回のブログのすぐ後にお引き渡しとなったのですが、天候の影響などで外構工事が未完成のままに引越しの日を迎えました。Kさんが暮らしはじめてまもなく植栽以外の外構工事が完了したところで、外から見ても家の形が整った印象です。外構写真や外観写真を撮影してK邸完成のブログを書こうかとも考えたのですが、引越ししたばかりの頃はなかなか生活が落ち着くものでもないので、植栽を植えたタイミングをK邸の完成としようと考えました。Kさんとは「荷物など片付いたころに植栽を植えましょうか。」というお話をしており、年末年始の忙しい時期を避けるなどして、ここにきて植栽を植えるタイミングとなりました。

玄関まわり(夕)

玄関まわり(夕)

植栽は「玄関前」と「木塀で囲われたリビング前の庭」に植えました。

玄関前には少し背が高い木を植えて、枝の下をくぐるようにして玄関に入っていくイメージで外構デザインをしています。ここにはハナミズキを植えました。家を設計しているときに「ハナミズキが良いかなあ。」「私もハナミズキが良いと思っていました。」「白ですよね。」「やっぱり。」なんて会話をしながら決めました。ハナミズキには白色とピンク色がありますが、ピンク色の方が強くて手入れしやすいそうです。Kさんは「ピンクも良いかも。」と思われたそうですが、初志貫徹という事で白色になりました。ちなみに、ハナミズキは英語でdogwoodと言います。いわれはともかくとして、ワンちゃんと暮らすK邸に相応しい木のように思えてきます。ハナミズキは秋の終わり頃から冬の終わり頃にかけて植栽に適しているそうなので、今の時期は植えつけに良いようです。これから大きく育って、K邸の暮らしをますます素敵なものにしてくれると思います。

リビング前植栽

リビング前植栽

リビング前の木塀で囲われた庭には、ツツジを植えました。「ツツジが良いですね。」「紫陽花も素敵ね。」といった感じでいろいろと候補が上がったのですが、Kさんはツツジに決めました。小さな庭なので、可愛らしい佇まいが似合います。リビングの障子を開けたときに趣ある植栽が見えると、毎日の暮らしに彩が出る感じです。Kさんは「庭の照明を植栽にあてて、リビングから夜の庭の景色を楽しむのが好きです。」とおっしゃっていました。

リビング前植栽(夜)

リビング前植栽(夜)

Kさんの新居での生活も落ち着き始めたので、家具などが入っている写真を撮影する事にしました。出来る範囲でホームページの作品ページに掲載していくつもりです。今の作品ページにあるK邸の写真は、お引渡し前のものです。こちらもご覧いただき、今後掲載する暮らしのある写真と比較していただくと面白いと思います。

玄関(夜)

玄関(夜)

福島

江戸川区K邸-16(外部仮設足場撤去)

外部仮設足場が外れました。

建物の外部工事が終わり、仮設足場が外れました。
足場が外れると、おおまかな家のたたずまいが見えてきます。
家の外観は、シンプルな形に杉板の素材感が映える印象になったと思います。

こういった木を活かしたデザインでは、木の伸縮に対応できるように工夫をしたり、汚れや雨などによる木の劣化をおさえる工夫をしたりと、ちょっとしたコツが必要です。‘木の張り方’を検討し、‘水切りを入れる場所’や‘水切りの形’を検討し、‘外部仕上げにコーキングを使わない納まり’を検討し、もろもろ詳細に配慮をしています。そういった詳細には、現場監督さんの経験と知恵が大きく影響しました。そして、‘大工さんの杉板張りの精度’と‘板金屋さんの頑張り’があったから実現できたとも思います。

20160906_足場撤去 028

杉板の素材感は青空に映えます

外壁が仕上がってみると、やはり木は材木になっても生きているようです。外壁仕上げとして杉板を張るときには、板と板の間に1mm~2mmの隙間をあけるようにしています。しかし、大雨が降った時には杉板が水分を吸って膨らんで、この隙間がつまっていました。雨が止んでしばらくたつと、隙間は元の間隔に戻りました。これから冬の乾燥期に向かうにつれて杉板が乾燥していくので、板と板の隙間は大きくなっていきます。
設計段階で検討して現場でまとめ上げたさまざまな工夫が、こういった木の特質を活かすようにこれから効いてくると思います。

20160906_足場撤去 018

道路に面した家の南側には、これから木塀に囲まれた小さな庭を造ります。

家の外観があらわになると、近隣の風景が変わります。これから外構工事が進むにつれて、敷地前面の細い通りの雰囲気もだんだんと良くなっていくことを期待しています。

福島

江戸川区K邸-14

外壁仕上げの杉板を張り終わりました。

大工さん1,5人で10日間かけて杉板を張りました。大工さん一人で張りはじめて、途中から大工さんがもう一人加わったので、1.5人で作業をしたとみています。

外壁の杉板を一階から張り始めたところ。杉板は一枚ずつ張ります。

外壁の杉板を一階から張り始めたところ。杉板は一枚ずつ張ります。

杉板を張る前に、‘外壁に出てくる設備の位置’と同時に‘杉板割付’を詳細に検討しました。割付というのは、‘仕上げ材同士の間隔’や‘どこを基準にして仕上げ材を張り始めるか’など、仕上げ材の配置のことを言います。杉板は夏の多湿な時期には膨らんで、冬の乾燥期には縮みます。上手く割付をしないと、杉板同士が干渉しあって割れたり、となりの杉板との隙間が大きくなってがたついたりします。そういったことも考慮に入れながら、割付をいろいろと検討しました。しかし、いざ杉板を張り始めてみると、想定していたよりも材の幅にばらつきがあり(杉板がそれぞれ微妙に寸法が違う)、丁寧に詳細に検討した割付通りには張れませんでした。こうなると、割付と同時に決めた‘設備位置’や‘板金位置’などに狂いが生じます。杉は自然素材なので工場製品のようにキッチリカッチリした寸法のものと同じようには扱えません。出来るかぎり周辺との取り合いに気を使いながら、全体のバランスを見て仕上ていくように、大工さんには多少の狂いは良しとして工事を進めてもらいました。大工さんが杉板一枚一枚の特徴を見ながら臨機応変に対応して、後で支障が出ないように杉板を張る事を優先します。自然素材であれば、すべての材の色が違うという事にもなります。K邸に使っている杉板は、保護用の塗装をしたものです。着色用の塗装ではないので、杉の自然な色むらや模様をそのまま反映した仕上げになります。1枚の材の中でも、上の部分と下の部分ではかなり色が違います。色のバランスについても、大工さんの感覚に頼りながら仕上ていく事になります。

杉板の幅や色などにはばらつきがあります。

杉板の幅や色などにはばらつきがあります。

自然素材ならではの雰囲気があります。

自然素材ならではの雰囲気があります。

 

杉板を張り終えてみると、予想通りに外壁がとても良い雰囲気になりました。‘軽さ’と‘渋さ’と‘端正さ’を感じさせる少し‘ロマンチック’な佇まいになると思います。足場を外して家の姿がはっきりと見えるようになれば、K邸のデザインが周辺の風景を良くするだろうと期待しています。

福島