敷地の東側に畑があります。その畑の周辺には木も茂っており、少しのどかな光景です。南側と北側には二階建ての建物が近接していて、西側は狭い道路を挟んで大きな倉庫です。東側の光景は、都会では贅沢に思えます。それに、東側から畑越しに射す朝日は気持ちが良さそうです。そこで東側の景色を活かした計画としました。明るさと開放感が欲しい昼の空間を敷地東側に配置して、そこにフィックスの東向きピクチャーウィンドウを設けています。キッチンからも昼の空間越しにピクチャーウィンドウを楽しめます。
いつか畑が宅地になってしまう可能性に対しても、配慮が必要だと考えました。東側隣地に建物が建ってしまうと、昼の空間への採光条件が悪くなり、ピクチャーウィンドウからの景色や開放感も楽しめなくなります。そうなると、他にもピクチャーウィンドウと同等の役割を果たす窓が欲しくなります。都市に建つ家で採光と換気を確保するには、中庭を設けるのが有効です。母娘それぞれの棟の間隔が適切であれば、中庭的な空間をつくることが出来ます。そこに向けて大きめの窓を設置したら、東側に隣家が建っても窮屈な暮らしにはなりません。という事で、天井まで届く掃出し窓と障子を入れました。中庭にはウッドデッキを設けて、より快適さと利便性が高い空間にしています。
周辺から家がどのように見えるのかという点にも配慮をしました。のどかな光景には、控えめな印象の佇まいが相応しいように思います。地域にも馴染む抑え気味のデザインとなるように、よく見かける切妻屋根のシンプルな外観としました。
福島