既存家屋の空間構成は、完成時である45年前の〈少し広めの家〉によく見受けられたように思います。一階は南向きの続き間を中心とした間取りです。その続き間の〈間口〉と〈奥行〉と〈天井高さ〉は、日本間の寸法となっています。他の部屋も同様ですが、尺を単位に、畳の大きさを基にして、部屋のあり方が決められています。畳や障子などが入っていない部屋であっても、どこか日本らしい空間に感じられるところがあります。既存家屋の空間の骨格が日本的であるという言い方も出来るかもしれません。
それ故に、間取りを変えずにリフォームをする場合、どこまでヨーロッパ風にしようとしても、空間から日本建築らしさが抜けきる事は無いように思います。新築であれば、例えばヨーロッパ風のモチーフが無くても、間取りや空間のプロポーションのとりかたによって、空間の骨格からヨーロッパらしさのある家に出来たかもしれません。
そういった事情もあって、住み手からのご要望にあった〈ヨーロッパ風のインテリアデザイン〉は、多くをインテリアコーディネートによって実現する事としました。ヨーロッパデザインのファブリックや家具や照明器具などを、印象的に用いています。内装仕上げとしては、既存の空間とバランスをとるために、ところどころにヨーロッパ風のモチーフをちりばめ、雰囲気を創るに留めました。もっともそれらしくデザインしたのは、リビング・ダイニングです。ここでは、日本的な空間の骨格にどう向き合うのかを、より問われた気がします。本格的に〈ヨーロッパ風のインテリアデザイン〉にしようとすると、既存の空間では広がりが足りないように感じます。寸法的には、天井の高さがあと600mm、部屋の奥行きがあと1000mmは欲しいところです。日本的な空間の骨格のままバランスをとるために、モチーフ(モールディングと三心アーチとウィリアム・モリスの壁紙)を抑え気味にもちいたデザインとしました。空間の広がりへの補足効果を考えて、壁も天井もシンプルな白い左官仕上げにしてもいます。
〈ヨーロッパ風のテイストを入れた日本の家を創る〉という姿勢で向き合ったデザインです。
福島