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葛飾区T邸-8(どのようにデザインをしたのか_屋根について)

‘赤い瓦屋根’は、計画当初からのTさんのご要望です。瓦は‘和型桟瓦’になります。多くの人が思い浮かべるいわゆる普通の瓦です。
敷地が狭小地であるだけではなく、前面道路も狭いものです。立ち位置を選んで見上げても、なかなか屋根はきちんと見えません。思い入れのある屋根です。そんな敷地状況でも‘赤い瓦屋根’を楽しめるデザインを検討する事となります。

万十軒瓦

敷地の間口いっぱいに軒瓦が並んでいたら、屋根全体が見えていなくても、瓦屋根の雰囲気は出ます。狭小住宅の屋根面積は小さいものです。あまり屋根を入り組んだ形で小割にすると、瓦が目にうるさい印象になります。このように考えて「‘寄棟屋根’や‘方形屋根’のように家を覆うような屋根の形こそ相応しい」という結論に至りました。家の平面や敷地の形状を考慮に入れると‘寄棟屋根’を選ぶことになります。大棟の長さが短いため、方形に近い印象です。家に一体感を持たせる形でもあるので、外観がまとまるところも良いと考えました。
ただ軒瓦が敷地の間口いっぱいに見えるだけではまだ不十分です。そのデザインが大切になります。狭小地らしく、きちんと家の広さを得ようとすると軒の出もとれません。外壁の一番上を切り欠くように見切を入れて、軒の出がなくても屋根がきれいに見えるデザインにしています。軒瓦は瓦の印象を強く表現できる‘万十軒瓦’が相応しいと思いました。小さな‘寄棟屋根’では‘大棟’と‘隅棟’だけが飛び出しているように見えかねません。棟瓦は‘紐丸瓦一本伏せ’として、抑え目な棟のデザインにしました。

寄棟と下屋の表情

まだもの足りません。よりしっかりと‘赤い瓦屋根’の印象が残るデザインとして、‘下屋’を用いた屋根の表現が有効だと考えました。‘下屋’は人の目につきやすい高さとなるので、しっかりと‘赤い瓦屋根’を見せることが出来ます。もちろん、その見せ方への配慮が大切です。‘下屋’は‘けらば’の納まりで家の印象を決めてしまうところがあります。外壁から突き出た‘けらば’を‘招き’にすると、より屋根らしい雰囲気を持ってグッと存在感が増します。このような‘けらば’の納まりにする時には、軒先と壁が絡む部分の雨水処理が悩ましいところです。現場監督さんに相談をして、板金で雨水の流れを調整するようにしました。昔からある納まりですが、まだ検討の余地は残っているのかもしれません。大きな片持ちバルコニーと‘下屋’が絡むところは‘絵振板’風に納めました。‘招き’では‘拝み’にあたる部分を厚板でとめています。厚板は板金で覆って雨仕舞としました。

下屋の招きけらば

下屋の納まり_絵振板風

‘下屋’を玄関にかかるようにする事で、‘赤い瓦屋根’は日々の暮らしに馴染むようになります。軒下をくぐるたびに、軒裏や軒先はおのずと目に入ります。軒裏は垂木と野地板を見せた‘アラワシ’にして、軒先には‘赤い瓦屋根’と並んで見える‘鼻隠し’と‘広小舞’をまわしました。素朴でかっちりとした印象のデザインは、玄関まわりをきちんとした家に相応しい雰囲気にします。

下屋の軒裏と軒先

人の目に付くという事は、粗が目に付くという事でもあります。窯で焼く瓦は、もともと均一には出来ていません。ただ並べるだけではピタッと隙間なく重なる事などなく、近くで見ると屋根が少し波打っているように見えてしまうわけです。そこで‘下屋’の瓦を敷く時には、少し削るなどして瓦を合わています。

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