タグ別アーカイブ: 戸襖

葛飾区T邸-7(どのようなデザインにしたのか)

T邸のデザインには、Tさんの経験を拠り所としたところがあります。地域性もあってか、それらの経験にはある種の風情や懐かしさを感じます。そのデザインは、おのずと何処か日本的情緒をまとう事になりました。

‘赤い瓦屋根’に‘杉板鎧張りの外壁’と‘木製格子戸’が特徴の佇まいです。
Tさんが若い頃に住んだ家が‘赤い瓦屋根’で、とても好きだったそうです。計画当初からのご要望です。赤がほど良く印象に残るデザインとしました。
外壁については、私達が設計した‘江戸川区K邸’の杉板仕上げをTさんが気に入って下さったので、‘杉板鎧張りの外壁’を提案させていただきました。‘赤い瓦屋根’との相性も良いです。Tさんが幼い頃には、同様の杉の仕上げをよく目にしたのではないかと思います。「この地域に相応しい」との思いもありました。
‘木製格子戸’も、当初から強く要望されていました。ご実家に使われていたことがあるようです。これもまた、Tさんが幼い頃にはよく目にしたのではないかと思います。外観の要となっています。

敷目天井、唐松フローリング、漆喰壁

家の中に入ると、‘敷目天井’と‘唐松フローリング’が東西に延びる水平面を形成して、その二面に挟まれるように垂直面の‘漆喰壁’が立つ空間になります。ここに‘障子’と‘戸襖’と‘格子戸’を印象的に配置しています。Tさんがこれまで住んできた家にも‘敷目天井’はありました。これもやはりまた、Tさんが幼い頃にはよく目にしたのではないかと思います。小上がりになった‘和室’もあります。Tさんが子どもの頃に慣れ親しんだ三畳間です。伝統的な空間を意識しつつ、T邸に相応しい工夫を施しました。一階は自然素材でつくった優しい空間です。

アラワシ天井、唐松フローリング、壁紙

落ち着いた色と質感の‘壁紙’と白い無機質な‘引戸’

杉板の階段で二階に上がると、一階とは装いを変えた空間になります。杉の隅木と垂木を素材のまま見せて、上に向かって方向性を持った空間をつくります。この‘アラワシ天井’は、寄棟屋根の形に沿って家を覆います。床は一階と同じ‘唐松フローリング’にして、家全体のインテリアに統一感を持たせました。床と天井は木の素朴な表情で、そこに落ち着いた色と質感の‘壁紙’と白い無機質な‘引戸’を組み合わせて、しっとりとした趣のある空間にしました。

バルコニーのアラワシ天井

‘アラワシ天井’は、5畳ほどの大きさのバルコニーも覆います。家の内外にわたって傘がかかったようにも見えるデザインです。

福島

葛飾区 T 邸-6(どのようなプランニングをしたのか)

具体的なプランニングですが、最も特徴的なのは‘玄関’の在り方かもしれません。T邸の‘玄関’は、雰囲気や使い勝手を‘縁側’のようにしました。「リビングに‘縁側’を設けて、そこから掃出し窓をくぐって家に出入りする」イメージです。
Tさん‘たっての希望’である‘木製の引違い格子戸’を設けられる位置は、家の防火に関連する法(延焼の恐れのある部分)によって、道路側のほぼ中央に決まります。狭小地ながら駐車スペースの要望もあり、採光も道路側を当てにする事になります。これらの前提条件で、効率よくまとまった大きさのリビング・ダイニングをつくるには、‘玄関’を簡素化するのが有効だろうと考えました。この簡素化を‘縁側’のイメージで実現しようという着想です。‘玄関’とリビング・ダイニングの間は‘縁側’らしく‘障子’で仕切ります。
家への出入りを楽にするため、出来るだけ‘玄関’の床の段差を無くしました。車椅子でも楽に家へ出入りできるようになっています。

和室の戸襖を開けたところ

和室の戸襖を閉めたところ

狭くても良いので畳のある床が欲しいという御要望もあったので、小上がりのある3畳の和室を設けました。普段は三枚の戸襖を開けて(戸袋に引き込みます)、リビング・ダイニングと一体感を持った使い方をします。三枚の戸襖を閉める事で、寝室としても使える想定です。これにより一階だけで生活を完結させる事ができます。この和室は小さいがゆえに、畳に寝る良さとベッドに寝る良さを併せ持った使い勝手になると考えています。

カウンターと出窓越しに見る緑

キッチンは’背が高いカウンター’と’エアコンを仕込んだ垂れ壁’でリビング・ダイニングとの間を仕切っています。Tさんにとって快適なキッチンとリビング・ダイニングとの距離感を考えて、このような仕切り方(開き方)にしました。壁付けのシステムキッチンを設置して、まわりにTさんの暮らし方に合った出窓やカウンターや収納を設けて、高密度な作業スペースにしています。ダイニングテーブルからは、カウンターとキッチンの出窓越しに隣地の緑が見えるようにしました。

多目的に転用できる納戸(ロフト有)

二階には多目的に転用できる納戸を設けました。お母様の部屋と息子さんの部屋の間に配置して、双方から使える納戸にしています。廊下からも入れるようにしているので、個室としても成立します。納戸の中を家具で仕切るなどする事で、さまざまな使い方が想定出来ます。息子さんが結婚して家族が増える可能性を考慮しての事です。

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葛飾区 T 邸-5(どのようにプランニングをするのか)

T邸は都市部の狭小地に建つ狭小住宅になります。70代のお母様と40代の息子さんが暮らす家です。ゆくゆくは息子さんが家を相続する予定ですが、お母様が暮らしやすくする事を優先するように求められていたように思います。

私は「今はもちろん、この先も暮らしやすい家にする事が大切だ」と考えています。先の事を考えるときに、身体の変化への配慮も必要ではないかと思います。人はだんだんと‘疲れやすくなったり’‘重いものを持てなくなったり’‘手や足が以前より上がらなくなったり’するものです。そんなふうに変わっていく身体にたいして、それほど負担がかからない暮らし方を考えるように心がけています。‘暮らしに無駄な動きが生じないようにする’‘維持管理に手間がかからないようにする’‘一階だけで生活が完結できるようにする’‘床に段差を無くす’‘建具を引戸にする’といった方針でプランニングします。「効率の良い合理的な家をつくる」とも言えます。特殊な方法を採用しているわけではなく、丁寧にプランニングしているという事になるかと思います。

引違い玄関前

特に狭小住宅では「‘小さくて’効率の良い合理的な家をつくる」となります。小さい家の方が、無駄に動く必要もなく、掃除もメンテナンスの範囲も狭くなり、楽に暮らせるという事になりそうです。しかしただ単に小さい家にすると「なんだか息苦しくて快適ではない」となりかねないので、お施主さんの暮らし方を見ながら工夫をします。その際には「住む人の手が行き届く範囲を見極める」「住む人が楽しくできる家の事を把握する」といったところがとても大切になってきます。庭があると、花を植えて楽しめる人もいれば草むしりが嫌になる人もいます。家族の顔が見えるキッチンだと、リラックスして家事を出来る人もいれば生活にメリハリが無くなる人もいます。

狭小地の場合は、敷地の形状もプランニングにとても大きく影響してきます。敷地条件に合わせながら、Tさんの暮らし方に相応しい工夫をしていきます。

階段室と和室の引戸を閉じたところ(奥のカウンター前が階段室引戸)

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