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葛飾区T邸-10(どのようにデザインをしたのか_内部空間について-1)

‘静かな空間’にしたいと考えました。

初めてご要望を伺った頃から、Tさんは「明るい部屋は居心地が悪い。暗い部屋にしたい。」とよく仰っていました。それは単純に‘日射しや照明などの光の加減’として語られていたと思います。しかし、打合せを重ねていく中で、私はそこに別のニュアンスを感じるようになっていきました。「Tさんにとって‘暗さ’とは‘落ち着いた雰囲気’を象徴するものなのではないか」と…。そして「それは私が思う‘静かな空間’によって成り立つのではないか」とも考えるようになります。

このころ‘静かな空間’について思うところがあり、デザインの時機をうかがうようにしていました。住宅のデザインとは、それを望むお施主さんがいて、それに相応しい条件が整う事で、はじめて成立するように思います。T邸はその時機であると考えたわけです。

では私が思う‘静かな空間’とは何か? とても感覚的なものなのですが、‘抑制の効いたデザイン’にする事が大切になると思っています。奇をてらう事なく、お施主さんに馴染みのある材料や慣れた空間構成を活かすデザインです。

Tさんの経験を拠り所として、私が共感できるところを新たなデザインに昇華していきます。もちろん光に対する要望にも配慮をして、薄明るく内部空間が浮かび上がるようにもしています。これまでの暮らしぶりから、その空間は何処か日本的情緒をまとう事になります。

福島