タグ別アーカイブ: インテリアコーディネート

世田谷区K邸リフォーム-3(どのような能力が作り手に求められるか)

リフォームと新築とでは、設計の進め方が異なります。そのため、建築家に求められる能力もまた異なるように思います。
リフォームでは、既存家屋がどのように作られたのかを把握する事が大切です。築年数が経っている場合は、古い建て方を理解している必要もあります。どのように作られたのかを知るためにも、そこにどのように手を加えることが出来るのかを判断するためにも、建築家には〈人の手で出来る作業に対する知識や感覚〉が求められます。そして、それをデザインとして昇華する能力もまた求められると思います。

ダイニングから見た配膳カウンター

工務店さんに求められる能力もまた同様です。とりわけ〈いつもとは違う臨機応変な対応〉が必要になりますが、これは住宅を施工する多くの工務店さんにとって難しいように思います。工事中には、殊に大工さんにかかる負担は大きく、いつもよりも〈知識〉〈経験〉〈感覚〉が求められます。出来る事なら、リフォームする既存家屋が建てられた頃に一線級であった大工さんに面倒を見てもらいたいところです。
K邸リフォームの場合は、馴染みの工務店さんにお世話になりました。大工さんはお二人で、共に45年前には活躍をしていた70歳ほどのベテランになります。どちらも期待にたがわぬ仕事ぶりでした。

福島

世田谷区K邸リフォーム-2(どのように設計に取り組んだのか)

高齢のお母様と娘さんご夫婦が共に暮らすのを機に、築45年のお母様の家を全面リフォームする事になりました。

ある意味で、とてもリフォームらしい設計になったと思います。
一般的に全面リフォームに求められるのは〈傷んだところを直す〉〈足りない性能を付加する〉〈全てのスペックを今よりも上げる〉〈変化したライフスタイルに合わせる〉〈好みのデザインにする〉といったところかと思います。

Kさんご家族には、既存家屋での暮らしのイメージがあります。リフォームに当たっての要望は、そのイメージのうちにある問題点を解決したいというものでした。はじめの頃の打合せでは、既存の家のこの部分をこうしたいという具体的なお話が多かったように思います。どちらかと言えば暮らし方を大きく変える事の無い、修繕に近いリフォームと言えます。建替えたかのような家にリフォームする場合と比べると、より既存の家を活かす方法です。
私には「高齢のお母様の暮らし方が大きく変わるのは避けたほうが良い」という思いもありました。そういった事情によって、あまり間取りを変えない設計方針となります。外観についても、修繕を施した上で色や形を整えるにとどめる事としました。

外観

打合せを重ねていくと、はじめは修繕に近かった要望に変化が出てきて、デザインとライフスタイルにもKさんご家族の想いが広がっていきます。素敵な家具やカーテンに囲まれて、雰囲気が良い洋風の空間でくつろいで過ごす、そういったイメージです。
間取りはあまり変えないデザインによって、ライフスタイルを大きく変える事となります。

福島

世田谷区K邸リフォーム-1(竣工写真)

世田谷区K邸リフォームの竣工写真が出来あがりました。
素敵な仕上がりになったと思います。飯貝カメラマンによる撮影です。

K邸リフォームは、インテリアデザインに重きを置いて計画したように思います。特にインテリアコーディネートを前提として、その雰囲気を創る意図がありました。

ダイニング

デザインするにあたっては〈光と色〉も意識しました。例えばリビング・ダイニングでは、 〈藍色〉のレースカーテン越しに広がる外光の色を、空間の基調としています。
夫婦の寝室では、木の素材感が印象的な空間に〈浅紫色〉のアクセント壁が沈んだ色の光を反射するようにしています。

夫婦の寝室

こういった色のある光を写真に反映する事は、とても難しいと思います。
〈目に見えている印象〉と〈写真の印象〉の間にズレが生じるのは、常について回る問題なのかもしれません。

そういった問題を乗り越えて、カメラマンは建築を写真にしていくように思います。

福島

江戸川区K邸-13(家具店巡り)

お施主様と一緒に、家具屋さん巡りに行ってきました。

椅子の座面高さを調整して、自分に合う高さを確認します。

椅子の座面高さを調整して、自分に合う高さを確認します。

K邸の工事は順調に進んでおり、現場を見てお施主様はより具体的に室内のイメージが沸いてきたようです。

造り付けのダイニングテーブルとパソコンデスクに合いそうな椅子と、リビングに置くソファをいくつかの家具屋さんで見てみました。

お施主様が気になっていた家具があるお店や、私達が内装の雰囲気から選んだおすすめの家具があるお店をまわりました。あらかじめ本やインターネットで見てみたい家具に目途を付けておいて、お店に行って実際に座ったり、大きさや手ざわり、色合いを確認したりしました。

板座のアームチェア

板座のアームチェア

リビングに置いた時のサイズ感について福島から説明中。

リビングに置いた時のサイズ感について福島から説明中。

実際に家具を見ると写真の印象とは違っていたり、写真では選ばなかった家具が良くみえたりします。椅子の場合は、座り心地の個人差もあるように思うので、やはり実物を体験することが大切です。また、その家具単体の見えかただけではなく、ほかの家具とのバランスや室内の色やプロポーションとのバランスもあるので、設計者が家具選びに同行してアドバイスすることもとても大切です。「お店では素敵なソファだと思ったけど、家に搬入したら大きすぎて失敗だった」というような話はよく聞きます。使い勝手や座り心地と見た目の好みや印象、バランス良く選ぶのは難しく、でもとてもわくわくして楽しいことです。

何軒も回って、素敵な椅子がいくつかありました。K邸のリビングに素敵な椅子が置かれたところを想像して、私達もとても楽しみな気持になりました。

遠山