タグ別アーカイブ: スタジオ・スペース・クラフト一級建築士事務所

葛飾区K邸-5(周辺環境との関係)

敷地の東側に畑があります。その畑の周辺には木も茂っており、少しのどかな光景です。南側と北側には二階建ての建物が近接していて、西側は狭い道路を挟んで大きな倉庫です。東側の光景は、都会では贅沢に思えます。それに、東側から畑越しに射す朝日は気持ちが良さそうです。そこで東側の景色を活かした計画としました。明るさと開放感が欲しい昼の空間を敷地東側に配置して、そこにフィックスの東向きピクチャーウィンドウを設けています。キッチンからも昼の空間越しにピクチャーウィンドウを楽しめます。

ピクチャーウィンドウ

キッチンからの眺め

いつか畑が宅地になってしまう可能性に対しても、配慮が必要だと考えました。東側隣地に建物が建ってしまうと、昼の空間への採光条件が悪くなり、ピクチャーウィンドウからの景色や開放感も楽しめなくなります。そうなると、他にもピクチャーウィンドウと同等の役割を果たす窓が欲しくなります。都市に建つ家で採光と換気を確保するには、中庭を設けるのが有効です。母娘それぞれの棟の間隔が適切であれば、中庭的な空間をつくることが出来ます。そこに向けて大きめの窓を設置したら、東側に隣家が建っても窮屈な暮らしにはなりません。という事で、天井まで届く掃出し窓と障子を入れました。中庭にはウッドデッキを設けて、より快適さと利便性が高い空間にしています。

ウッドデッキの中庭

周辺から家がどのように見えるのかという点にも配慮をしました。のどかな光景には、控えめな印象の佇まいが相応しいように思います。地域にも馴染む抑え気味のデザインとなるように、よく見かける切妻屋根のシンプルな外観としました。

福島

葛飾区K邸-4(一人暮らしと家の大きさ)

一人暮らしの一軒家を限られた面積で建てるにあたって、どんなプランなら快適に暮らせるのかと考えます。できるだけ部屋を広くみせるのであれば、浴室に洗面もトイレも入れたワンルームマンションのような平面もあり得るのかもしれません。しかし、母娘お二人には相応しくないように思われます。ワンルームマンションの様では暮らしにメリハリがなくなり、気持ち良く過ごせないと考えました。

対面式キッチン

キッチンや浴室・洗面室・トイレ等のサニタリーは、それぞれ独立して設けるほうが快適そうです。水回りにはそれなりに面積を割く事になります。他の部屋については、昼の空間と夜の空間に分けるようにしました。そうする事で暮らしにメリハリが生まれると考えたからです。

サニタリー

設計に着手した際に、母娘それぞれの一人暮らしのお住まいを拝見させていただきました。お二人とも無駄な物は持たず、うまく整理整頓をしながら暮らしていらした印象です。そこで収納の面積を必要最低限に設定して、出来るだけ部屋の面積を確保する事にしました。
年を重ねて体の自由が利かなくなる事もあるかもしれないと考えて、睡眠や着替えのための夜の空間である寝室の面積確保を優先しました。4.5帖ほどは必要です。

娘の寝室

残りの面積5.5帖で昼の空間を成立させる事となります。この面積でリビングダイニングと呼べる部屋をつくるのは無理があります。多目的に使う個室のイメージで、昼の空間を成立させようと考えました。それまでの御二人の暮らしぶりを鑑みて、それぞれの昼の空間のあり方を模索します。お母様の家については、大きなテーブルを部屋の中心に据えて、窓辺に書斎コーナーのあるレイアウトにしました。娘さんの家については、壁に沿ってモノを並べて部屋の中心を空けるようにして、対面式キッチンに向かってダイニングコーナーのあるレイアウトにしました。

母の昼の空間

娘の昼の空間

福島

葛飾区K邸-3(母娘の距離)

この敷地に建っていた二階建ての古い一軒家で、お母様が一人暮らしをしていました。娘さんが同居を決めたのを機に、家を建て替える事となります。

まずは御二人に相応しい‘同居のあり方’を模索していきます。私が初めて打合せをさせて頂いた時には、既に母娘それぞれが独立して暮らす二世帯住宅のイメージを持っていらっしゃいました。二人とも一人暮らしに馴染みがあるし、自分の空間で好きに暮らすのが快適そうです。検討案は単身者用の共同住宅に近いイメージになっていきます。いくつかの案を比較しながら、それぞれの世帯の距離感を探ります。できるだけ広い家に住むのであれば、二階建て案が適していると考えられます。お母様の体力を考慮に入れると、二階建ての場合は娘さんが上階に住むのが良さそうです。とは言え、娘さんにとっても二階に上がる事はそれなりに大変ではあります。それに階ごとに世帯をわけると、母娘の距離が遠い印象もあります。母娘の年齢や単身で一世帯という条件を考えると、常にお互いの気配を感じられるようにしたいし、声が届くようにはしたいところです。そこで、平屋の二世帯住宅の可能性を探る事になりました。

二棟の家

敷地条件を考えると、一世帯当たりの面積に余裕はありません。おのずと単身世帯に最低限必要な面積を考えながらの設計となります。その上で二世帯が付かず離れずのプランを検討していきます。結果的に、それぞれの世帯を一軒家と見なした案に落ち着きました。二つの家がテラスやアプローチを挟んで独立する配置にして、それを共有玄関で繋ぐプランです。

テラスを挟んで二棟が並ぶ

アプローチ

共有玄関

福島

葛飾区K邸-2(竣工写真)

竣工写真を撮影しました。引き渡し時から2年ほど経て、飯貝カメラマンに撮影をお願いしました。中庭や玄関を挟んで鏡像のように建つ二棟は、ほぼ同じ平面を持ちます。竣工後と比較して、それぞれに住み手の個性がより反映されているように思います。

住み手である母娘は、毎日のように顔を合わせて声を聴く関係ですが、それほどお互いの家を行き来する事は無いそうです。自分の家(棟)にいても相手の家(棟)の様子がなんとなく分かる距離感なので、意識的に交流を持つ必要がないのだろうと思います。お互いの暮らしに干渉する事もなく、マイペースに楽に暮らしているそうです。

正面(道路側)

福島

世田谷区K邸リフォーム-11(どのようにインテリアコーディネートをするのか ③)

お気に入りの食器をリビング・ダイニングに飾りたいという要望がありました。「クラシックなデザインの洋食器を集めている」と伺ったので、アンティークのグラスキャビネットに飾る事を提案しました。デザインや工芸的手間を考えると、アンティーク家具には良心的な価格のものが多いように思います。費用対効果が高いという見方も出来るかもしれません。ただしハンドメイドの一点ものであるため、気に入った家具と出会えるかどうかは縁によるところが大きいと言えます。

寝室前のアンティークドレッサー

本格的なアンティーク家具を購入された事が無いというお話でしたので、まずはアンティークショップで店頭に並ぶものを見てイメージをもっていただきました。訪れたのはロイズ・アンティークスさんです。娘さんは素敵なデザインに目を奪われた様子で、他の家具もアンティークショップで探す事になります。後日、仕事の合間にお一人でお店を訪れて、鏡台を購入されました。

リビングのグラスキャビネット

当初の目的のグラスキャビネットですが、アンティークショップのジェオグラフィカさんに良いものがありました。一目見て直ぐに決断されたご様子でした。こちらのお店にも素敵な家具が多く展示されており、娘さんは他にスモールテーブルやサロンチェアなども購入されました。

サンルームのアンティーク家具

照明器具については、ヨーロッパ調の華やかなものが良いというお話でした。例として挙げられたのが、ポール・ヘニングセンがデザインしたペンダントライトです。デンマークの照明器具ブランドであるルイスポールセンが扱っています。

リビング・ダイニングのパテラ600とコラージュ450

私がイメージしていたリビング・ダイニングには、華やかでありつつもシンプルな形のものが相応しいように思えました。ルイスポールセンに探して、リビングにはポール・ヘニングセンがデザインしたパテラ600を選びました。デンマークデザインの定番と言っても良い照明器具だと思います。ダイニングにはルイーズ・キャンベルがデザインしたコラージュ450を選びました。こちらは新しめのデザインです。

ダイニングのコラージュ450

玄関にもルイスポールセンの照明器具を提案したのですが、より華やかなものが良いと思われたようです。あらためてお話しを伺ってみると、シャンデリアのような照明器具をイメージされていたのですが、それには天井の高さが十分とは言えません。そこで少し方向性を変えてみて、華やかなシーリングライトでの検討を提案しました。すぐに候補が思い浮かびます。イタリアの照明器具ブランドであるフォスカリーニから出ているもので、パトリシア・ウルキオラ&エリアナ・ジェロットがデザインしたカボシェシーリングです。きらびやかさとシンプルさを併せ持ち、品が良い印象です。

玄関のカボシェシーリング

娘さんの個室には、もう少し気楽で軽い印象の照明器具が似合うように思います。デンマークの照明器具ブランドであるレ・クリントに良いものがありました。アンドレアス・ハンセンがデザインしたワンファイブフォーです。折り紙のような造形が印象的でシンプルなペンダントライトです。
これらの独創的デザインの照明器具については、インテリアショップのhhstyleさんに手配をお願いしました。

福島

世田谷区K邸リフォーム-10(どのようにインテリアコーディネートをするのか ②)

ダイニングチェアについては、はじめから希望されているものがありました。デンマークの家具ブランドであるカール・ハンセン&サンから出ている椅子で、ハンスJ.ウェグナーがデザインをしたYチェアになります。座り心地が良く扱いも楽で、デンマークデザインの定番と言える椅子だと思います。
インテリアショップのhhstyleさんで、あらためて実際に座っていただきました。
ダイニングチェアの検討中に、お母様の体調が優れない時期がありました。その際に、心配された娘さんから「もっと軽い椅子のほうが良いのではないか」と相談を受ける事になります。Yチェアは程好い軽さで使いやすいのですが、他の定番と言える椅子の中には更に軽い椅子もあります。インテリアブランドのカッシーナ・イクスシーさんが扱っているものなので、ショールームで体験をして頂きました。
あれこれと検討を重ねた末に、当初から希望されていたYチェアを選ぶ事となりました。いろいろな姿勢で長時間くつろいで過ごせるように造られており、そういった使い方が反映された形はとても美しく魅力的です。
木種と塗装色と座面高さを決めて、hhstyleさんに手配をお願いしました。

ダイニングからのキッチンの眺め

ダイニングテーブルについては、天板を石にしたいという要望がありました。「水が沁みない素材で、硬くて平滑な一枚物が良い」との考えから、「石の天板が良いのではないか」という結論に至ったそうです。希望に沿えるものは既製品にはなかなかありません。アンティーク家具にいくつか見受けられたのですが、寸法や使い勝手などの条件に合いませんでした。製作する事も考えてはみましたが、検討を重ねて「性能と価格が共に現実的ではない」と判断をしました。そこで、素材を変えて条件を満たすものを探す事にします。ガラスや金属の天板の肌触りは、Kさん御家族の好みではないという事でした。考えた末に、インテリアブランドのカッシーナ・イクスシーさんから出ているダイニングテーブルのナインテーブルを選ぶ事となります。その天板の質感は独特で、アクリルウレタン樹脂とミネラル素材を混ぜ合わせたものを左官で仕上げています。シンプルで創造的なデザインの素敵なテーブルだと思います。

キッチンからのダイニングの眺め

福島

世田谷区K邸リフォーム-9(どのようにインテリアコーディネートをするのか ①)

リフォーム案を検討し始めた頃から、インテリアコーディネートのイメージについて伺う事が多かったように思います。
インテリアデザインを進めながら、まずは要望に合った家具や照明器具を思い起こし、次に他の候補がないかとインターネットで調べます。いくつか選んで提案をして、打合せをしながら候補を絞ります。その後にショールームで現物を確認して、インテリアコーディネートを決める流れです。

リビングのレースカーテンと影

カーテンについては、スイスのファブリックブランドであるフィスバさんのものを希望されていました。インテリアデザインを検討する中で、漠然と青など寒色系のカーテンが良いのではないかという話しになります。ホームページで目星をつけてからショールームに行き、いろいろなカーテンを眺めてみました。フィスバさんは親身になって相談にのってくれるので、楽しく前向きに検討が進みます。まずはリビング・ダイニング用に、刺繡が綺麗な〈藍色〉のレースカーテンを選びました。それに合わせてドレープカーテンは光沢のある〈水色〉にしました。娘さんは、入り口近くに展示してあった〈焦げ茶色と白色のグラデーション〉が美しいレースカーテンに一目惚れをします。夫婦の寝室に合いそうだという話しになりました。ドレープカーテンはアクセントクロスの色として考えていた〈浅紫色〉に合わせました。
レースカーテンの検討では、柄の位置を見て生地の使う範囲を決めていきます。施工済みの窓の位置を娘さんご夫婦に現場で確認していただいた後に、改めてショールームを訪れて加工寸法を決めました。気になるラグやクッションなどもあり、その後も数回にわたってショールームを訪ねる事になります。

寝室のカーテン

ソファについては、まずカウチソファの使用を提案しました。リビングをくつろげる空間にしたいと考えていたので、寝そべりながら使えるカウチソファが適しているように思えました。
娘さんは、忙しい仕事の合間を縫って家具ブランドのAREAさんに足を運び、気に入ったものを見つけました。変形したL字型の革製カウチソファです。私からL字型のものをいくつか提案していたのですが、より個性的でくつろいだ印象の崩した形を選ばれました。
カウチソファはある意味で場所をとるのですが、変形したL字型となると更に置き方に制約が出てくる事が考えられます。後日、私もAREAさんの店舗に何度か同行させていただきました。改めて店舗で寸法や造りを確認して、カウチソファの配置を再検討しました。娘さんは、革を好きな色に染められるところにも魅力を感じていらっしゃったようです。ソファの色決めの時点で、すでにリビング・ダイニングは寒色を活かしたインテリアにする方針としています。娘さんはご自身で色見本帳を購入して、青系の中から色を吟味して選ばれました。

変形カウチソファとコーヒーテーブル

ソファが変形したL字型となると、それに合わせるコーヒーテーブルの形に制約が出てきます。円形や丸みを帯びた三角形といった天板を使う事で、ソファに対する納まりを良くするように考えました。いくつか提案をしたのですが、なかなかご納得いただけません。ある日、娘さんから「インテリアショップのhhstyleさんで、ノグチテーブルを購入しました」と連絡を頂きました。ノグチテーブルは、ヴィトラ社から出ているイサム・ノグチによるデザインのコーヒーテーブルです。曲線で構成された木の脚部に丸みを帯びた三角形のガラス天板を載せた構成になります。ガラス天板はKさん御家族の好みではないと思っていた等もあって、それまでの提案から外していました。娘さんは、店頭に飾ってあったノグチテーブルを見て、直ぐに購入を決めたそうです。きっとその美しい姿を見て、素材の好みを超えて惹かれたのではないかと想像しています。

福島

世田谷区K邸リフォーム-8(どのようなデザインにしたのか ③)

リビング・ダイニングと夫婦の寝室を除いた他の部屋においては、カーテンに〈光と色〉の効果をそれほど求めませんでした。もちろんカーテンの吟味はしたのですが、デザインの基調は他の素材に求めています。

玄関ホールのアクセントクロス

ご夫婦の寝室のように、アクセントクロスに〈光と色〉の効果を期待したところもあります。なかでも印象的なのは、リビング前室だと思います。色と柄に特長があるウィリアム・モリス定番の壁紙を、壁一面に使っています。華やかな雰囲気であり、アーチ形やモールディングと相まって、ヨーロッパ風のデザインを印象づける効果もあります。
これらのヨーロッパ風のデザインにも〈その空間らしさ〉が感じられるのではないかと思います。

リビングから見た前室のアクセントクロス

〈木の質感〉は、くつろいだ雰囲気が相応しい寝室のデザインに活かせるのではないかと考えました。寝室にはご夫婦用とお母様用とがあります。

夫婦の寝室の羽目板天井と格子

床はナラの無垢フローリングです。リビング・ダイニングの床に使ったウォールナットと比べると、少し気軽な印象だと思います。
天井はナラの羽目板として、色と質感を床にそろえました。羽目板を使うと、木の雰囲気をより感じられるようになると思います。
部屋を緩やかに仕切るツガの格子も設けました。木の印象を強くすると共に、空間に独特の奥行きを感じさせる効果もあると思います。

夫婦の寝室の入口

いずれの木もクリアオイル仕上げにしました。落ち着いた雰囲気のすごしやすい寝室に出来たように思います。

福島

世田谷区K邸リフォーム-7(どのようなデザインにしたのか ②)

インテリアデザインをするにあたっては、インテリアコーディネートを前提としています。とは言え、家具や照明器具などが変わっても〈その空間らしさ〉を感じられるようにしたいという想いもあります。長く我が家に愛着を持つ上で、それがとても大切なことに思えるからです。
あまり間取りを替えないリフォームであるがゆえに、空間構成や造形には〈既存の家らしさ〉が保たれます。新たなライフスタイルに相応しい〈その空間らしさ〉をデザインするには、造形などよりも〈光と色〉や〈木の質感〉を拠り所にするのが良いと考えました。

リビング・ダイニングのカーテン

カーテンへのこだわりをうかがってから、いつもよりカーテンの光をイメージするようになりました。ドレープカーテンが光を反射して色をつくる、レースカーテンが光を透かして色をつくる、天井から床までの開口部いっぱいに流れるように柔らかい布がさがっている、そんなイメージです。
いろいろな条件を踏まえて、こういったカーテンの〈光と色〉をリビング・ダイニングのデザインに活かす事としました。ショールームで実際にカーテンを見ていると、よりイメージが湧いてきます。最終的には〈水色〉のドレープカーテンと〈藍色〉のレースカーテンを選ぶことになりました。カーテンがつくる青みがかった光を美しく魅せるために、壁と天井は白い左官仕上げにしました。

夫婦の寝室のカーテン

ショールームには素敵なカーテンが並んでいます。娘さんが一目惚れしたレースカーテンを、ご夫婦の寝室に入れる事になりました。焦げ茶色と白色のグラデーションが美しいレースカーテンです。寝室に相応しく光を抑える質感となっています。ドレープカーテンはアクセントクロスの色として考えていた〈浅紫色〉に合わせました。アクセントクロスと共に沈んだ色の光を反射して、落ち着いた雰囲気をつくります。

福島

世田谷区K邸リフォーム-6(どのようなデザインにしたのか ①)

「どのような雰囲気の家にしたいですか?」と伺ったところ、「ヨーロッパ風のインテリアデザインが好み」「色がきれいな部屋にしたい」「硬い印象は避けたい」ということでした。印象的だったのはカーテンのお話です。質の良いカーテンにしたいと仰っていて、特にスイスのファブリックブランドであるフィスバさんのカーテンを希望されていました。デザインを検討しはじめると、ここに基調があると感じるようになります。
家具についてもイメージを持っていらっしゃいます。であれば、インテリアコーディネートを前提としてデザインすることが、好ましい雰囲気にする上では大切なはずです。そこで、私からインテリアコーディネートも提案させて頂きました。

夫婦の寝室のモールディング

ことさらヨーロッパ風にしたいとなれば、どこかにそれらしきモチーフが少しあると効果的に思えます。そこで、造り付け家具の扉にはモールディングを入れるようにしました。
やりすぎないように配慮が必要です。例えばリビング・ダイニングにモールディング入りの腰壁を設けると、よりヨーロッパ風が強調されるかもしれません。しかしながら、既存の空間には合わないと判断をしました。そもそも既存の空間の骨格が日本的であるためです。ヨーロッパの住宅と同じデザインをするのではなく、どこまでヨーロッパ風のテイストを入れるのかという感覚かもしれません。

アーチとアクセント壁

リビング・ダイニングと前室を仕切る壁の開口は、アーチ形にしました。これによって、さらにヨーロッパ風を楽しめるインテリアデザインになったと思います。どのようなアーチ形が良いかと考えたのですが、ここでも既存の空間の骨格が日本的であることが影響してきます。半円アーチ形にするとヨーロッパ風になるとは思うのですが、十分な開口をつくるには天井高さが足りません。そのため、低めの天井であっても大きめの開口をつくれる三心アーチ形としました。

福島