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H邸リフォーム現場追記-2(キッチンタイル張)

今年6月に完成した松戸市H邸リフォームについて、少し時間が経ってしまいましたが、工事中にブログに書ききれなかったことを振り返って追記したいと思います。
アイランドキッチンのモザイクタイル張りです。

アイランドキッチンの周りをぐるりと囲むように25mm角の正方形のタイルを張ります。キッチンのタイルを張る部分の大きさは長さ2400mm×奥行850mm×高さ775mm。相当な数のタイルが同じ目地間隔でびっしりと並びます。

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天板だけ目地材が詰まっています

施工の手順としては、タイルを張りつけた後に目地材を充填していきます。
この写真は天板だけに目地が詰まった状態で、側面はまだ目地材が入っていないため、影になって目地部分が黒く見えています。白いタイルに濃いグレーの目地材を使ってコントラストをつけるデザインもありますが、今回はタイルも目地も白にして、清潔感のある爽やかな印象にしました。

こちらは、キッチンのタイル張りからシンク等の設備をセットして完成するまでのコマ撮り動画です。

よく見ると、張りつけた小さなタイルを一枚一枚指でずらして位置を調整していて、かなり細かく根気のいる作業です。職人さんはほとんど休憩もとらずに、一人黙々と作業されていました。タイルを張って、目地材を詰めて、最後に余分な目地材を丁寧に拭き取っていくと、仕上がった表面が光を反射して輝いていました。工場で均質に作ったものとは違い、焼き物であるタイルの微妙な大きさの差と、タイル一枚一枚が少しずつ傾いていることで、全体で見ると表面がわずかに波打っていて、それが手作りの味になって良い雰囲気を醸し出していました。

何の工事も、無事に出来上がるのが当たり前のようですが、やはり人の手でつくるものなので、どんな職人さんがどのようにやるかによって、出来上がりは全く違ってきます。今回は本当に几帳面な職人さんが丁寧につくってくださって、とてもきれいな仕上がりになりました。

遠山

江戸川区K邸-15(階段設置)

階段が設置されました。

側桁階段

できるだけ軽い印象のデザインにした側桁階段

床材に合わせて階段も杉板にしたので、足触りが柔らかくて気持ち良いです。

 

一階から二階に上がる階段は、吹抜けに設けています。階段の途中までは、蹴込み板無しの側桁階段です。段板と側桁は木製階段として使い勝手に支障が出ないぎりぎりまで部材寸法を小さくして、できるだけ軽い印象のデザインにしています。吹き抜けにさりげなくおかれたオブジェの様に見える事を意図した階段です。

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吹抜につきだした側桁階段

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吹抜から屋上まで

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踊り場まわりのルーバー(写真ではボードが置かれてルーバーは隠れています)

屋上に出るための踊場のまわりにはルーバーを設けました。二階から上の階段にはルーバー越しの独特の光が入ります。空間が上昇する印象をこの光がつくりだす事を期待しています。

階段を設置してみると、吹抜けの空間に上へと広がる印象が加わったように感じます。

吹き抜けまわりには、階段の他にも大きな空間を彩るデザインがこれから増えていきます。より居心地の良い雰囲気になるように、現場で丁寧に詳細をつめていこうと思います。

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吹抜に設置された一階から二階までの階段

福島

江戸川区K邸-14

外壁仕上げの杉板を張り終わりました。

大工さん1,5人で10日間かけて杉板を張りました。大工さん一人で張りはじめて、途中から大工さんがもう一人加わったので、1.5人で作業をしたとみています。

外壁の杉板を一階から張り始めたところ。杉板は一枚ずつ張ります。

外壁の杉板を一階から張り始めたところ。杉板は一枚ずつ張ります。

杉板を張る前に、‘外壁に出てくる設備の位置’と同時に‘杉板割付’を詳細に検討しました。割付というのは、‘仕上げ材同士の間隔’や‘どこを基準にして仕上げ材を張り始めるか’など、仕上げ材の配置のことを言います。杉板は夏の多湿な時期には膨らんで、冬の乾燥期には縮みます。上手く割付をしないと、杉板同士が干渉しあって割れたり、となりの杉板との隙間が大きくなってがたついたりします。そういったことも考慮に入れながら、割付をいろいろと検討しました。しかし、いざ杉板を張り始めてみると、想定していたよりも材の幅にばらつきがあり(杉板がそれぞれ微妙に寸法が違う)、丁寧に詳細に検討した割付通りには張れませんでした。こうなると、割付と同時に決めた‘設備位置’や‘板金位置’などに狂いが生じます。杉は自然素材なので工場製品のようにキッチリカッチリした寸法のものと同じようには扱えません。出来るかぎり周辺との取り合いに気を使いながら、全体のバランスを見て仕上ていくように、大工さんには多少の狂いは良しとして工事を進めてもらいました。大工さんが杉板一枚一枚の特徴を見ながら臨機応変に対応して、後で支障が出ないように杉板を張る事を優先します。自然素材であれば、すべての材の色が違うという事にもなります。K邸に使っている杉板は、保護用の塗装をしたものです。着色用の塗装ではないので、杉の自然な色むらや模様をそのまま反映した仕上げになります。1枚の材の中でも、上の部分と下の部分ではかなり色が違います。色のバランスについても、大工さんの感覚に頼りながら仕上ていく事になります。

杉板の幅や色などにはばらつきがあります。

杉板の幅や色などにはばらつきがあります。

自然素材ならではの雰囲気があります。

自然素材ならではの雰囲気があります。

 

杉板を張り終えてみると、予想通りに外壁がとても良い雰囲気になりました。‘軽さ’と‘渋さ’と‘端正さ’を感じさせる少し‘ロマンチック’な佇まいになると思います。足場を外して家の姿がはっきりと見えるようになれば、K邸のデザインが周辺の風景を良くするだろうと期待しています。

福島

江戸川区K邸-13(家具店巡り)

お施主様と一緒に、家具屋さん巡りに行ってきました。

椅子の座面高さを調整して、自分に合う高さを確認します。

椅子の座面高さを調整して、自分に合う高さを確認します。

K邸の工事は順調に進んでおり、現場を見てお施主様はより具体的に室内のイメージが沸いてきたようです。

造り付けのダイニングテーブルとパソコンデスクに合いそうな椅子と、リビングに置くソファをいくつかの家具屋さんで見てみました。

お施主様が気になっていた家具があるお店や、私達が内装の雰囲気から選んだおすすめの家具があるお店をまわりました。あらかじめ本やインターネットで見てみたい家具に目途を付けておいて、お店に行って実際に座ったり、大きさや手ざわり、色合いを確認したりしました。

板座のアームチェア

板座のアームチェア

リビングに置いた時のサイズ感について福島から説明中。

リビングに置いた時のサイズ感について福島から説明中。

実際に家具を見ると写真の印象とは違っていたり、写真では選ばなかった家具が良くみえたりします。椅子の場合は、座り心地の個人差もあるように思うので、やはり実物を体験することが大切です。また、その家具単体の見えかただけではなく、ほかの家具とのバランスや室内の色やプロポーションとのバランスもあるので、設計者が家具選びに同行してアドバイスすることもとても大切です。「お店では素敵なソファだと思ったけど、家に搬入したら大きすぎて失敗だった」というような話はよく聞きます。使い勝手や座り心地と見た目の好みや印象、バランス良く選ぶのは難しく、でもとてもわくわくして楽しいことです。

何軒も回って、素敵な椅子がいくつかありました。K邸のリビングに素敵な椅子が置かれたところを想像して、私達もとても楽しみな気持になりました。

遠山

 

建築家の独り言-2

「工作的な要素が感じられるデザインをしたい」と思う事があります。工作的といって私がイメージしているのは、工芸ほど高度な熟練技術を必要とはせず、手仕事によって単純な技術で作る事が出来る一品ものといったところです。思いはあるものの、実際にはそれほど工作的なデザインをすることが出来ずにいます。

「例えば家をつくるなどは、手仕事による一品生産だと言えるのではないか。」と考える人もいるでしょう。全く同じ家はそうそうないという点では、家は一品生産だという見方が出来るとは思います。ただ私には、家は手仕事でつくられているとはもう実感できなくなっています。家を既製品の組み合わせだけで完成させようと思ったら、それほど手仕事を入れずに進めることが出来るためかもしれません。基礎だけは手作業の割合を落とすことが難しいように思いますが、一昔前の仕事と比べて今の現場の仕事は、出来上がった商品を組み上げているように見えるかもしれません。工事が高効率化された住宅メーカーの家などは、プラモデルを組み上げるような印象に近いと言えるかもしれません。とは言っても、家はプラモデルよりはるかに大きなものなので、既製品を適切に選んだり、適切な位置に適切に組み上げるという作業も大変な作業ではあります。昔に比べて熟練度や作業量を求められないとはいえ、どこをとっても組み上げるのは人なので、職人さんたちに体力や勤勉さや智恵などは必要です。

私の仕事の話に戻ると、既製品の組み合わせだけで家をつくっているわけではありません。しかし、現場監理をしていると、家づくりにかかわるどの職種にも既製品を組み合わせるという感覚が入り込んでいることを実感します。そういったところが、工作的なデザインを困難にしているように思う事があります。

例えば、現場で障子の打合せをしているときに、建具屋さんに「障子の組子の見付は7.5mmしか出来ない。」と言われた事があります。単に組子を加工したらよいだけの話なので、見付はどうとでもなるはずです。ましてや組子の割付が大きい場合などは、見付寸法が大きい方が安定します。本当は出来ないのではなくて「いつも使う流通している加工済み既製品組子の見付が7.5mmだ。」という話です。でも、きっと建具屋さんの感覚はすでに「出来ない」となっているのだろうと思います。

他にも、例えば板金屋さんに「庇の唐草の出は20mmで下がりは30mmしか出来ない。」と言われたことがあります。これも本当は出来ないのではなくて「いつも使う流通している加工済み既製品がその寸法だ。」という話です。でも、やはり板金屋さんの感覚ではすでに「出来ない」となっているのだろうと思います。

こういった話をしてきた建具屋さんも板金屋さんも、とてもまじめに仕事に取り組んでいます。仕事ぶりも丁寧です。その彼らでも既製品を取り入れずに自分たちの仕事を全うするのが一般的ではなくなってきているという事かもしれません。このような状況になったのは「常に同じ質を要求される。」「クレームが無いように質を担保する。」といった事情があるからかもしれませんし、「もう自力できれいに加工するには技術力が不足している。」「人件費を考えるとばかばかしくてやれない。」という事なのかもしれません。

多くの職種で似たような話があります。現場で大工さんがノミもカンナも使わなくなって久しく、ゲンノウもノコギリもめったに使わないように思います(電動ノコギリや電動カンナは使います)。使う必要がなければ、技術力も身につかないし腕は落ちる一方だというのは想像に難くありません。もちろんきちんと自前でカンナをつくって現場にのぞむような職人さんもいますが、めったにお目にかかる機会はありません。そういう昔ながらの職人さんの人件費は割高になります。技術に見合った人件費として当然の帰結かと思います。こうなると、工作的なデザインのものをつくるために昔ながらの技術を駆使できる職人さんに頼る限りは、一定額以上の工事費が必要になります。

単純なつくりであっても、工作的なものは割高となりがちです。私の事務所の仕事は、建築家としてはローコストなものが多く、コストコントロールはかなりシビアになります。割高な工作的なものよりも、安くあがる既製品を組み合わせる事を選ぶことが多いと言えます。

工作的なデザインを実現するために、昔ながらの技術を駆使できる職人さんに頼る他に方法は無いものか、ローコストな仕事の中でも工作的なデザインを実現できないものか、そういったことも四苦八苦しながら考え続けています。

二年ほど前に家具職人さんと話をしたときに「旅行で東南アジアに行くといつも思うんだけど、日用品にしろお土産にしろ、街中を歩くと結構大変な手加工しているのがすごく安く売っているんだよ。もう彼らの方が安いし早いし上等なんだろうなって思うよ。」と言われたことがあります。「職人さんにできる事はなにか?」といった見方をすると、状況は刻一刻と変わっているように感じます。いつだってそうかもしれませんが、「以前のやり方と同じ」では通じない事もあるのだろうと考えています。

今できる事をきちんと見極めながら、工作的な要素が感じられるデザインにも取り組んでいきたいと考えています。

福島

 

江戸川区K邸-12(内外下地工事)

内部と外部の下地工事がほぼ完了しました。

間仕切壁下地等

壁断熱材、内壁胴縁、間仕切壁間柱

 

 

内部工事も順調に進んでいます。一階床下の断熱材を敷き、その上に床下地合板を張り、さらにその上に仕上の杉板フローリングを張りました。二階の床も仕上げの杉板フローリングを張り終え、K邸の床は和室以外が完成しました。

一階床下断熱材

一階床下断熱材と床下地合板

杉板フローリング

杉板フローリング

 

内壁下地もほぼ完成です。設備の配線や配管を済ませてから、建物外周部の壁には断熱材をいれ、その上に胴縁を取付ました。胴縁というのは、小断面の角材でつくる‘壁のボードを貼るための下地’です。狭小住宅では少しでも部屋を広くするために、また少しでも部材を減らしてコストを落とすために、胴縁を入れずに壁をつくる事が多いと思います。一階床と地盤面にそれほど段差がないバリアフリーの家にするために、K邸は一階の床が基礎立上り天端よりも下になります。基礎が室内に出ない(見えない)ように基礎の内側まで壁のボードで覆うため、胴縁を入れる事にしました。
内部の壁も終わり、これから天井下地の野縁を組みます。アラワシ天井が多い家なので、天井ボードを張るために野縁を組む範囲は少しだけといった感じです。

壁断熱材

壁断熱材、内壁胴縁

外壁の下地工事も完了です。内壁工事のように、外壁にも胴縁を入れました。胴縁を入れたのは、透湿防水シートと外壁仕上げの間に空気が流れる層をつくるためです。前回のブログに書いたように、室内から外周部の壁に入り込んだ湿気を外部に排出するために、通気層をつくるように設計しています。胴縁に大きな溝を一定間隔で入れて、空気が抜けるようにしたものを使いました。このような胴縁を通気胴縁といいます。K邸の外壁仕上げは杉板であり、材が乾きやすい納まりにするためにも通気層を設ける事は大切です。

通気胴縁

外壁通気胴縁

もう少しで杉板外壁仕上げの工事が始まります。自然素材の魅力が活かされた仕上がりになると思うと、とても楽しみです。

福島

江戸川区K邸-11(防水工事など)

防水工事が完了しました。

屋上FRP防水

外壁下地ボードの外側に透湿防水シートを張り、屋上の防水下地合板の上にFRP防水を施しました。

建物の外側をボードや合板などの下地で覆って殻をつくって、その殻のまわりを防水性能がある薄皮で覆った感じです。

梅雨の時期ではありますが、仮設足場に家の屋上を覆うような大きな屋根を設けてあるので、あまり天気に左右されずに防水工事をすることができました。

外壁下地透湿防水シート

外壁下地に張った透湿防水シートというのは、水は通さずに湿気を通す薄いシートです。石膏ボードなどの一般的な建材で室内に面する壁をつくると、外壁の中に室内で発生した湿気がたまりやすくなります。この湿気を建物の外側に排出する事で、外壁の中の結露を防いで、壁の中でカビがはえたり断熱材の性能が落ちたりする事がないようにします。K邸の場合は、外壁下地ボードとして透湿性があるVSボードを使っています。壁の中の湿度が高くなった場合、湿気はVSボードを通過して、さらにその外側にある透湿防水シートを通過して、外壁の通気層に出ていきます。湿気は、この通気層を経由して外部に排出されます。

FRP防水排水側溝とオーバーフロー加工

屋上の防水に使っているFRP防水というのは、液状の樹脂に硬化剤を加えたものをガラス繊維といっしょに塗る防水です。防水層をつくったらその上に保護仕上げ材を塗って、見た目を良くしつつ耐久性を上げます。木造住宅の屋上やバルコニーでよく使われる防水です。K邸では、一般的にはFRP防水の防水層施工後すぐに塗る保護仕上げを後日の施工とする事にしました。工事の途中でFRP防水の仕上面が汚れないようにして、出来るだけ造りたてのきれいな状態で家の完成を迎えるためです。

外部は、あと一工程で下地工事が終わるところまで来たといった感じです。

福島

江戸川区K邸-10(木製サッシ)

木製サッシをいれました。

木製玄関ドア搬入

室内に搬入された木製玄関ドア

 

K邸の南側外壁につく外部建具はすべて木製で、計三か所です。 リビングに面した‘一階のはき出し窓’と‘吹抜けのFIX窓’の二ヶ所が木製サッシで、‘玄関ドア’も木製です。K邸に設ける窓のうち、大きな窓はこの二ヶ所の木製サッシのみとなります。他の窓はすべて小さなアルミサッシです。木製サッシは断熱性能に優れており、窓枠の結露の心配などもないとされています。設計の初期には全ての窓を木製サッシで検討していたのですが、「木製サッシはアルミサッシより割高で、全ての窓への採用は難しい。」と判断して、大きな窓のみ木製サッシとしました。性能上もデザイン上も、最も有効に木製サッシの特徴を活かせる窓に採用しました。

木製サッシ設置

リビングに設置された木製サッシ(一階は掃出し窓、吹抜けはFIX窓)

 

現場に搬入された木製サッシと木製玄関ドアの質感はとても良い印象で、家の中でも外でも素敵な雰囲気をつくるために一役買ってくれると感じました。

木製玄関ドア設置

木製玄関ドア設置後の外観

これら木製外部建具については、ここからは養生が大切になってきます。建物内部の工事をするときに使う職人さんや資材の出入り口は、この木製サッシと木製玄関ドアになります。これからの工事で汚したり傷つけたりしないように、家が完成するまでしっかりとした養生をしなければなりません。木製サッシの他にも、K邸には家の完成までの養生に細心の注意を払う必要があるところが多いと言えます。工事には「物をつくるむずかしさ」の他に「養生のむずかしさ」や「つくった物を汚さないように傷つけないようにという姿勢を職人さんに持ち続けてもらうむずかしさ」というものもあると思います。そういった見方をしたときにも、K邸は難しい工事です。

福島

木製サッシリビング掃出し窓設置

木製サッシ(一階掃出し窓)設置後の外観

江戸川区K邸-8(屋上断熱)

屋上の床断熱をしました。

K邸は屋上がある木造二階建てです。切妻屋根や寄棟屋根のように勾配がある‘勾配屋根’とは区別をして‘陸屋根’といわれるほぼ平らな屋根になります。その平らな屋根が雨漏りしないように防水をして、その上を歩けるような屋上をつくります。

外の暑さや寒さが家の中におよぼす影響を少なくするために、木造住宅の屋根では小屋裏(屋根裏)に断熱層を設ける事が一般的だと思います。しかし、K邸は二階の天井をアラワシ梁にしているため、勾配屋根にあるような小屋裏がありません。‘水平構面(風や地震などにより水平にかかる力に耐える面)をつくるための梁上に張る24mm合板’と‘防水層をつくるための下地合板’の間に空間が出来るので、ここに断熱層を設ける事にしました。屋根の小屋裏にある断熱層というより、屋上の床下にある断熱層というイメージです。

K邸屋上納まり参考図

勾配屋根の断熱納まりと陸屋根(屋上)の断熱納まりの例

小屋裏と比較すると断熱層が薄くなるため、断熱材には薄くても高性能なフェノールフォームを入れました。雨水を屋上から排水するために、陸屋根にもほんの少し勾配があります。この少しの勾配の影響で、断熱材と防水下地合板の間にわずかな隙間ができます。夏には、この隙間にある空気が熱せられて断熱層の温度が上がります。熱くなった空気を外に逃がして断熱層の温度を調整するために、防水下地合板の下に屋外まで通る空気の逃げ道を設けました。

屋上断熱材

屋上の断熱材(フェノールフォーム)を施工中

断熱材を敷き込んだ後に防水層下地の合板を張ると、ほんの少し勾配がついた床面の完成です。この後はこの合板面に防水を施します。

屋上防水下地合板

屋上の防水下地合板を張ったところ(仮設屋根の下が屋上)

福島

江戸川区K邸-8(外壁下地)

外壁下地を張り終えました。

VSボード張り(内部)

VSボード張り(内部)

仮設足場に屋根をかけているので、梅雨時にもかかわらず、着々と工事が進んでいきます。

外壁下地は、地震や火災に強い‘厚さ12mmのVSボード’です。「透湿性もあるので壁の中が結露しない。」とうたわれている製品を選んでいます。結露がなければ壁の中にカビも生えにくく、壁の中にある断熱材の性能も維持されるという良さがあります。ボードを張り終えた家の姿は、なんとなく堅い殻をまとっているような印象です。カニのように殻で構造を成立させている感じとは違いますが、K邸の軸組の形や空間構成にはそう感じさせるものがあるのかもしれません。

アルミサッシ取付

アルミサッシ取付

外壁下地を張り終えると構造の検査をして、その後すぐにアルミサッシを取り付けました。同時進行で、給排水配管工事や電気配線工事も進めています。配管や配線のルートは設計段階で決めて、工事前に現場監督さんと作業工程の打合せをしておきます。軸組が出来上がったところで、設備業者さんと‘家の中の配管や配線について確認をする’ための打ち合わせをします。事前に設計図書を渡しているのですが、設備業者さんにとって設計図書の詳細を把握する事が難しい場合があります。現場で軸組を見ながら設備業者さんと打合せをすると、「予定とは違う方法による配線や配管の方がより良いのではないか。」という話になる事もあります。K邸では、エアコンの冷媒管のルートを上棟後に見直しました。

設備配管

設備配管

外壁下地で空間の輪郭がはっきりしてきた家の中にいると、もうなんとなく住めるような気分になります。

外壁下地と軸組

外壁下地と軸組

福島